利下げ、年内にさらに0.5%を見込む=パウエル議長FOMC記者会見スピーチ 2024年09月19日 10時08分
連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は9月18日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、フェデラルファンド金利(FF金利)を0.5%引き下げた決定について、「この決定は、金融引締めの政策スタンスを適切に調整することで、緩やかな成長とインフレ率が持続的に2%まで低下する中で、労働市場の力強さを維持できるとの確信が強まったことを反映しています」と述べました。今後の利下げについては、「経済が予想通りに進展した場合、FF金利の適切な水準は今年末に4.4%、2025年末に3.4%になると予想する中央値が示されました」とし、年末までにさらに0.5%程度の利下げの可能性に言及しました。年内、FOMCは2回(11月上旬、12月中旬)開催されます。
パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ
[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2024年9月19日
私たちは米国民の利益のために「最大雇用」と物価の安定という二大使命の目標達成に引き続き全力を注いでいます。米国経済は全般的に堅調で、過去2年間に目標に向けて大きく前進しました。労働市場はかつての過熱状態から冷え込んでいます。インフレ率はピーク時の7%から大幅に緩和され、8月時点では推定2.2%となっています。私たちは最大限の雇用を支え、インフレ率を目標の2%に戻すことにより経済の力強さを維持することを約束します。
本日、連邦公開市場委員会(FOMC)は、政策金利を0.5%引き下げることにより、金融引締めの程度を軽減することを決定しました。この決定は、金融引締めの政策スタンスを適切に調整することで、緩やかな成長とインフレ率が持続的に2%まで低下する中で、労働市場の力強さを維持できるとの確信が強まったことを反映しています。また、保有有価証券の削減を継続することも決定しました。
【米国経済】
最近の経済指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆しています。今年上半期のGDPは年率2.2%のペースで増加し、入手可能なデータでは今期もほぼ同様のペースで成長する見込みです。個人消費は回復力に富んでおり、設備投資と無形資産投資は昨年の低調なペースから回復しました。住宅部門では、第1四半期に力強い伸びを示した投資が、第2四半期には後退しました。供給環境の改善は、回復力に富んでいる需要と過去1年間の米国経済の好調を支えています。当委員会の経済予測サマリーでは、当委員会の参加メンバーは、今後数年間のGDP成長率は中央値で2%と、概ね堅調に推移すると予想しています。
【労働市場】
労働市場は依然として冷え込んでいます。過去3ヵ月間の雇用者数の増加は月平均11万6000人で、今年初めのペースから顕著に後退しました。失業率は上昇したものの、依然4.2%と低水準。名目賃金の伸びはこの1年で鈍化し、雇用と労働者の格差は縮小しました。広範な経済指標では、労働市場の状況が2019年のパンデミック直前よりもタイトでなくなっていることを示唆しています。労働市場がインフレ圧力を高める要因となっていません。SEP(*1)の失業率の予想中央値は今年末時点で4.4%で、6月時点の予想より10分の4上昇しました。
(*1)SEP ; Summary of Economic Projectionsの略で「経済予測サマリー」のこと。FOMCメンバーが提示する今後の主要マクロ経済変数の予測値。
【インフレ】
インフレ率は過去2年間で大幅に低下しましたが、長期目標である2%を依然上回っています。消費者物価指数とその他のデータに基づく推計によると、8月までの12カ月間にPCE物価総合指数は2.2%上昇し、変動の激しい食品とエネルギーのカテゴリーを除いたコアPCE物価指数は2.7%上昇しました。長期的なインフレ期待は、家計、企業、予測担当者を対象とした広範な調査や金融市場からの指標に反映されているように、引き続き良好に定着しているようです。SEPのPCE物価総合指数におけるインフレ率の予想中央値は、今年が2.3%、来年が2.1%で、6月の予想よりやや低めとなっており、それ以降の予想中央値は2.0%となっています。
【今回の決定】
私たちの金融政策は、米国民のために「最大雇用」と安定した物価を促進するという二重の使命に導かれています。過去3年間、インフレ率は目標である2%を大幅に上回り、労働市場環境は極めて逼迫していました。私たちはインフレ率の低下に主眼を置いてきましたが、それは適切なものでした。私たちは、高インフレが購買力を低下させ、特に食料、住宅、交通などの必需品のコスト上昇に対応できない人々に大きな苦難をもたらすことを痛感しています。
私たちの金融引締め政策は、総需要と総供給のバランスを回復するのに役立ち、インフレ圧力を緩和し、インフレ期待が十分に定着することを保証してきました。過去1年間の忍耐強いアプローチが実を結びました。インフレ率は目標にかなり近づき、インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信が深まりました。
インフレ率が低下し、労働市場が冷え込むにつれてインフレ率の上昇リスクは減少し、雇用の下振れリスクは増加しています。私たちは現在、雇用とインフレの目標達成に対するリスクはほぼ均衡していると見ており、私たちの二重の使命の双方に対するリスクに注意を払っています。
インフレの進展とリスクのバランスを考慮し、当委員会の本日の会合では、フェデラルファンド金利(FF金利)の目標レンジを0.5%引き下げ、4.75から5.0%とすることを決定しました。この金融政策スタンスの再調整は、経済と労働市場の力強さを維持するのに役立ち、より中立的な政策スタンスへの移行プロセスを開始する中で、インフレのさらなる抑制を可能にするでしょう。私たちは、あらかじめ設定されたコースを歩んでいるわけではありません。私たちは引き続き、会合ごとに意思決定を行っていきます。
【金融政策基本スタンス】
私たちは、金融引締め政策をあまりに急速に縮小すると、インフレ率の抑制を妨げる可能性があることを承知しています。同時に、金融引締め政策を緩やかにし過ぎれば、経済活動や雇用を過度に弱めかねません。当委員会は、FF金利の目標レンジの追加的な調整を検討する際、入ってくるデータ、進展する見通し、およびリスクのバランスを慎重に評価します。
我々のSEPでは、FOMC参加メンバーは、各自が今後最も可能性が高いと判断するシナリオに基づき、FF金利の適切な道筋に関する個別の評価を提示しました。経済が予想通りに進展した場合、FF金利の適切な水準は今年末に4.4%、2025年末に3.4%になると予想する中央値が示されました。この中央値は6月時点よりも低く、インフレ率の低下と失業率の上昇、およびリスクバランスの変化と一致しています。しかし、これらの予測は当委員会の計画や決定ではありません。
経済が発展するにつれて、金融政策は「最大雇用」と物価安定の目標を最も効果的に推進するために調整されます。経済が堅調に推移しインフレが持続すれば、金融引締めをより緩やかにすることができます。労働市場が予想外に弱まったり、インフレ率が予想以上に急速に低下したりした場合にも対応する用意があります。FRBの政策は、FRBの二重の使命の双方を達成する上で直面するリスクと不確実性に対処する態勢が整っています。
[日本語訳 ゴールデンチャート社]
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FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)