成長率予想は上方修正、FF金利は来年も高レベルを維持=パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ 2023年09月21日 10時46分
連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は9月20日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、今回FOMC参加メンバーが提示した「経済・政策金利見通し」(SEP)について説明、2023年と2024年の実質GDP成長率は上方修正され、2024年と2025年のフェデラルファンド金利予測中央値も上方修正されたことが示されています。
パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ(要旨)
[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2023年9月21日
私たちは、米国民のために「最大雇用」と安定した物価を促進するという、二つの使命に真剣に取り組んでいます。私たちは、高インフレが引き起こしている苦難を理解しており、インフレ率を目標の2%まで引き下げることに重大な責任を託されています。物価の安定はFRBの責任であり、物価の安定がなければ、経済は誰のためにも機能しません。特に、物価の安定がなければ、すべての人に恩恵をもたらすような力強い労働市場の状況を持続することはできません。
昨年初頭以来、FOMCは金融政策のスタンスを大幅に引き締めてきました。政策金利を5.25%引き上げ、証券保有残高を急ピッチで削減してきましたが、引き締めの効果はまだ十分に現れていません。本日、私たちは政策金利を据え置き、保有有価証券の削減を継続することを決定しました。今後、どの程度の追加的な金融引き締めが適切かを慎重に判断する状況にあります。私たちの決断は、今後発表されるデータ、見通しとリスクに関する評価に基づいて行われることになります。
最近の経済指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示しており、今年に入ってからの実質GDP成長率は予想を上回っています。個人消費に関する最近の数値は特に堅調です。住宅セクターの活動はいくぶん回復していますが、住宅ローン金利の上昇を主因として、まだ1年前の水準を大きく下回っています。金利上昇は企業の固定投資にも重くのしかかっているようです。経済見通し(SEP)において、当委員会参加者は実質GDP成長率の見通しを上方修正、実質GDP成長率の中央値は2.1%となりました。来年の成長率は中央値で1.5%に低下すると予想されています。
労働市場は依然として逼迫していますが、需給バランスは改善しています。過去3カ月間の雇用者数は月平均15万人増えましたが、年初の水準を大きく下回るペースでした。失業率は8月に上昇しましたが、依然3.8%と低い水準にあります。労働力率は昨年末から上昇し、特に25歳から54歳が上昇しました。名目賃金の伸びには緩和の兆しが見られ、求人数は今年に入って減少しています。求人数と応募者の差は縮小しているものの、労働需要は依然として労働者の供給を上回っています。FOMC参加メンバーは、労働市場のリバランシングが続き、インフレ上昇圧力が緩和されると予想しています。SEPの失業率予想中央値は、今年末の3.8%から今後2年間で4.1%に上昇すると予想しています。
インフレ率は、長期目標である2%を大幅に上回っています。消費者物価指数とその他のデータに基づき、8月までの12カ月間のPCE物価指数は3.4%上昇し、変動の激しい食品とエネルギーのカテゴリーを除いたコアPCE物価指数は3.9%上昇したと推定されます。インフレ率は昨年半ばからいくぶん緩やかになり、長期的なインフレ期待は、家計、企業、予測担当者を対象とした広範な調査や金融市場の指標に反映されているように、依然として十分に定着しているようです。とはいえ、インフレ率を持続的に2%まで低下させるプロセスは長い道のりです。SEPのPCEインフレ率の予想中央値は今年は3.3%で、来年は2.5%に低下し、2026年には2%に達する見込みです。
現在の金融政策スタンスは、経済活動、雇用、インフレに下方圧力をかけるものだと考えています。加えて、景気は家計や企業の信用収縮による逆風に直面しています。本日の委員会では、金融引き締めの進捗状況を踏まえ、フェデラルファンド金利の目標レンジを5.25~5.50%に維持し、保有有価証券の大幅削減を継続することを決定しました。私たちは、インフレ率を長期的に2%の目標まで低下させるのに十分な引締め政策スタンスを達成し、維持することに重大な責任をもっています。SEPでFOMC参加メンバーは、今後最も可能性が高いと思われるシナリオに基づき、フェデラルファンド金利の適切なパスについて、各自の評価を提示しました。仮に経済が予測通りに進んだ場合、フェデラルファンド金利の適切な水準は、参加メンバーの予測中央値は、今年末に5.6%、2024年末に5.1%、2025年末に3.9%になります。6月に発表したSEPと比較すると、今年末の予測中央値は修正されていませんが、今後2年間の予測中央値は0.5ポイント上昇しています。もちろん、これらの予測は当委員会の決定や計画ではありません。経済が予測通りに進展しない場合には、金融政策の道筋は最大限の雇用と物価安定の目標を促進するために適宜調整されます。当委員会は今後も、入ってくるデータの全体像と、経済の見通しに対するそれらの意味合いに基づいて、会合ごとに決定していきます。
これまでの経過を踏まえると、今後発表されるデータ、進展する見通しとリスクを見極めながら、慎重に政策を進めていく必要があります。現在の実質金利は、中立的な政策金利からの試算を大きく上回っていますが、金融政策スタンスを正確に把握する上で内在する不確実性に留意しています。適切であれば、さらに金利を引き上げる用意があり、インフレ率が目標に向かって持続的に低下していると確信できるまでは、引締め政策を維持するつもりです。インフレ率を長期的に2%に戻すために、どの程度の追加的な政策引き締めが適切かを決定する際、当委員会は、金融引き締めの累積、金融政策が経済活動やインフレ率に影響を及ぼすまでの時間差および、経済・金融情勢を考慮にいれます。インフレ率の低下には、トレンド以下の成長と労働市場の軟化が必要です。物価の安定を取り戻すことは、「最雇用」と長期的な物価の安定を達成するために不可欠です。
[ゴールデンチャート社]
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