引締め効果が発揮されるのはこれから=パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ 2023年07月27日 09時48分
連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は7月26日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、「本日、政策金利を0.25ポイント引き上げ、新たな一歩を踏み出しました。引き締め効果が十分に発揮されるのはこれからです。今後、どの程度の追加的な金融引き締めが適切かを判断するにあたっては、今後もデータに依存したアプローチをとっていきます」と、これまでの主張を繰り返しました。利上げの停止時期についての言及がありませんでした。
パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ(要旨)
[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2023年7月27日
私たちは、高インフレが引き起こしている苦難を理解しており、インフレ率を目標の2%に引き下げることに重大な責任を負っています。物価の安定を図ることは連邦準備制度理事会(FRB)の責任です。物価の安定がなければ、経済は誰のためにも機能せず、特にすべての人に恩恵をもたらす労働市場の好調な状態が持続することはできません。
昨年初め以来、連邦公開市場委員会(FOMC)は金融政策として大幅な引き締めスタンスをとってきました。本日、私たちは政策金利を0.25ポイント引き上げ、新たな一歩を踏み出しました。引き締め効果が十分に発揮されるのはこれからです。今後、どの程度の追加的な金融引き締めが適切かを判断するにあたっては、今後もデータに依存したアプローチをとっていきます。
最近の経済指標は、経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示唆してます。個人消費の伸びは年初から鈍化しているようです。住宅セクターの活動はいくらか持ち直したものの、住宅ローン金利の上昇を大きく反映して、依然として1年前の水準を大きく下回っています。また、金利の上昇と生産高の伸びの鈍化も、企業の固定投資の重荷になっているようです。
労働市場は依然として非常にタイトな状況です。過去3カ月間の雇用増加数は月平均24万4000人で、年初の水準を下回りましたが、依然として力強いペースです。失業率は3.6%と低水準が続いています。労働市場の需給がより良いバランスになりつつある兆候がいくつか続いています。労働参加率は昨年から上昇し、特に25歳から54歳の年齢層で上昇しました。名目賃金の伸びはいくらか緩和の兆しを見せ、求人数は今年に入って減少し、雇用と労働者の格差は縮小しているものの、依然、利用可能な労働者の供給を大幅に上回っています。
インフレ率は、長期目標である2%を大幅に上回っています。5月までの12カ月間、個人消費(物価指数PCE)は3.8%上昇し、変動の激しい食品とエネルギーのカテゴリーを除いたコアPCE物価指数は4.6%上昇した。6月の消費者物価指数(CPI)の12カ月変動率は3.0%、コアCPIIの変動率は4.8%でした。インフレ率は昨年半ばからいくぶん緩やかになったとはいえ、インフレ率を2%に戻すにはまだ長い道のりがあります。インフレ率が上昇しているにもかかわらず、長期的なインフレ期待は、家計、企業、予測担当者を対象とした広範な調査や金融市場の指標に反映されているように見えます。
FRBの金融政策は、米国民のために最大限の雇用と安定した物価を促進するというFRBが持つ使命に導かれています。私たちは、高インフレが購買力を低下させ、特に食料、住宅、交通といった必需品のコスト上昇に対応できない人々に大きな苦難をもたらすことを痛感しています。私たちは、高インフレが私たちの任務の双方にもたらすリスクに細心の注意を払っており、インフレ率を目標の2%に戻すことに重い責任を託されています。
本日の会合で当委員会は、フェデラルファンド金利(FF金利)の目標レンジを0.25ポイント引き上げ、目標レンジを5.25~5.50%としました。また、保有有価証券の大幅な削減も継続しています。本日の措置により昨年初めから政策金利を5.25ポイント引き上げたことになります。金融引き締めの効果は、特に住宅や投資など金利の影響を受けやすいセクターの需要に現れています。しかし、継続的な金融引き締めの効果が、特にインフレ率に全面的に現れるには時間がかかるでしょう。加えて、景気は家計や企業の信用収縮による逆風に直面しており、これが経済活動、雇用、インフレの重荷となる可能性が高いと思われます。
インフレ率を長期的に2%に戻すために適切と思われる追加の金融引き締めの程度を決定する際、当委員会は、金融引き締めの累積、金融政策が経済活動やインフレ率に影響を与えるラグ、経済・金融情勢を考慮します。私たちは、引き続き会合ごとに入ってくるデータの全体像と、それらが経済活動とインフレの見通しおよびリスクのバランスに与える影響に基づいて決定をします。インフレ率を低下させるには、トレンドを下回る成長と労働市場の軟化が必要です。物価の安定を回復することは、最大限の雇用と安定した物価を長期的に達成するために不可欠です。
[ゴールデンチャート社]
■関連記事
■関連情報(外部サイト)