インフレ2%実現は長い道のり=パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ 2023年05月04日 10時00分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は5月3日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、「過去1年間で5%の利上げは、住宅や固定投資には効果が認められるが、インフレ率には十分な効果が発揮されていない。長期的な2%に戻すには長い道のりを歩むことになる」との見通しを述べました。また、銀行セクターの混乱に対して「今回の銀行セクターのひずみは家計と企業の信用状況をさらに厳しくしている」と述べました。今後の金融政策については「入ってくるデータと経済見通しに基づいて会合毎に決定していく」と明確な見通しを示しませんでした。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ(要旨)

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2023年5月4日

  銀行セクターは、3月上旬以降概ね改善し、米国の銀行システムは健全で強靭です。私たちは、今回の出来事から正しい教訓を学び、このような出来事が再び起こらないよう取り組んでいきます。その第一歩として、先週、バー監督担当副議長によるシリコンバレー銀行に対するFRBの監督・規制に関するレビューを公表しました。このレビューでは、より強固で強靭な銀行システムを実現するために、私たちの規則や監督慣行に対処する必要性を強調しており、私はそうすることに確信をもっています。

 私たちは、高インフレが引き起こしている苦難を理解しており、インフレ率を2%の目標まで引き下げることに重い責任を託されています。物価の安定は、FOMCの責任です。物価の安定がなければ、経済は誰のためにも機能しません。特に、物価の安定がなければ、すべての人に利益をもたらす強い労働市場を維持できません。本日、FOMCは政策金利を0.25%ポイント引き上げました。昨年初めから、インフレ率を長期的に2%に戻すため、合計5%の利上げを行いました。また、保有する有価証券の削減も継続しています。今後、追加の金融引き締めがどの程度適切かについては、データに依存したアプローチで判断していきます。

 米国経済は昨年大幅に減速し、実質GDPは0.9%とトレンドを下回るペースで上昇しました。今年第1四半期の経済成長率は、個人消費が持ち直したものの1.1%と引き続き緩やかなペースでした。住宅セクターの活動は、主に住宅ローン金利の上昇を反映して、弱いままです。金利の上昇と生産高の鈍化も、企業の固定投資の重荷になっているようです。労働市場は依然として非常にタイトです。今年1~3月期の雇用増加数は月平均345千人でした。月平均の失業率は3.5%と非常に低い水準で推移しています。それでも、労働市場の需給がより良いバランスに戻りつつある 兆候はいくつかあります。労働力率はここ数カ月、特に25歳から54歳の人たちで上昇しました。名目賃金の伸びはいくらか緩和の兆しを見せ、求人数は今年に入ってから減少しています。しかし、全体として、労働需要は依然として利用可能な労働者の供給を大幅に上回っています。

 インフレ率は、長期的な目標である2%を大きく上回る水準で推移しています。3月までの12カ月間、PCE物価指数は4.2%上昇し、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアPCE物価指数は4.6%上昇しました。インフレ率は、昨年半ば以降、いくぶん緩やかになっています。それにもかかわらず、インフレ圧力は依然として高く、インフレ率を2%に戻すプロセスは長い道のりを歩むことになります。私たちは、高インフレが購買力を低下させ、特に食料、住宅、交通などの必需品のコスト上昇に対応できない人々にとって大きな苦難をもたらすことを痛感しています。私たちは、高インフレが私たちの任務の双方にもたらすリスクに細心の注意を払い、インフレ率を2%の目標に戻すことに責任をもっています。

 本日の会合で、当委員会はフェデラルファンド金利の目標レンジを0.25%引き上げ、目標レンジを5〜5.25%としました。また、保有する有価証券を大幅に削減するプロセスを継続しています。本日の措置により、1年あまりの間に5%ポイントの金利引き上げを行ったことになります。私たちは、金利の影響を受けやすい経済分野、特に住宅や投資などの需要に金融引き締めの効果を確認しています。しかし、金融引き締めの効果が、特にインフレ率に対して十分に発揮されるには時間がかかるでしょう。さらに、景気は信用状況の引き締めからさらなる逆風にさらされる可能性が高まります。私たちの金融政策行動と経済見通しの軟化に対応して、信用環境はこの1年ほどの間にすでに引き締まっていました。しかし、3月上旬に銀行セクターで生じたひずみは、家計と企業の信用状況をさらに厳しくしているようです。このような信用状況の悪化は、経済活動、雇用、インフレに影響を及ぼすと思われます。 これらの影響がどの程度あるかは、依然として不透明です。

 私たちは、入ってくるデータと経済活動とインフレの見通しに基づいて、会合ごとにその決定を行います。インフレ率の低下には、トレンド以下の成長率と労働市場の軟化が必要である可能性が高く、物価の安定を取り戻すことは、長期的に「最大雇用」と物価の安定を実現するための舞台を整えるために不可欠です。

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■関連情報(外部サイト)

FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)