1月27日、パウエル議長オープニング・ステートメント=FOMC記者会見 2021年01月28日 16時16分

FOMC終了後記者会見、パウエル議長のオープニング・ステートメント  

 2021年1月27日

  • FRBはインフレ目標と最大雇用が達成されるまで現在の金融緩和政策を維持する。
  • 米国経済は足元、コロナ感染再拡大で回復のペースが低迷している。
  • インフレは長期目標の2%を下回る水準で推移している。
  • ワクチン接種、ソーシャルでスタンス、マスク着用が経済回復を促進させる。


パウエル議長のオープニング・ステートメント(全文)      

[日本語訳 ゴールデンチャート]

 こんにちは。米連邦準備制度理事会(FRB)は、議会から与えられた金融政策の目標として最大雇用と物価安定の達成に重大な責務を託されています。FRBはできるかぎり強力な回復を確実なものにし、経済への持続的なダメージを抑えられるように、救済手段の提供と安定性の確保のためのあらゆる手段を迅速に展開してきましたしました。これらの措置によって、金利およびバランスシートに関する強力なガイドラインに基づき、この金融政策が経済回復が達成されるまで強力な経済支援を提供し続けることが可能となります。

 経済の行方は、引き続きウイルスがたどる道筋に大きく左右されます。ここ数カ月、COVID-19の感染者、入院者、死亡者が再び増加しており、何100万人ものアメリカ人に大きな困難をもたらしており、経済活動や雇用創出の重荷となっています。

 昨年の夏に経済活動が急激に回復した後、ここ数カ月は回復のペースが緩やかになっており、その弱さはウイルスの再燃やソーシャルディスタンスの拡大によって最も悪影響を受けているセクターに集中しています。家計のサービス支出は依然として低く、特に旅行や接客など、人が集まるところのビジネスセクターでは低い水準にあります。また、家計における消費支出は、これまでの大幅な増加から一転して減少しました。

 これとは対照的に、住宅セクターは低い住宅ローン金利にも支えられ、景気後退から完全に回復しています。また、設備投資や製造業の生産も回復しています。昨年春以降、経済活動が全体的に回復しているのは、連邦政府による景気刺激策や失業給付の拡大が、必要としている多くの家庭や個人への支援となっていることも一因となっています。最近成立した「コロナウイルス対策と救済法」(Consolidated Appropriations Act 2021;「包括予算割当法」2021年)はさらなる支援となります。全般的な経済活動は依然としてパンデミック前の水準を下回っており、今後の見通しは極めて不透明です。

 全般的な経済活動と同様に、労働市場の改善ペースはここ数カ月で鈍化しています。12月の雇用者数は14万人減少しました。コロナウィルス再拡大が企業活動に大きな影響を与える産業では多くの企業が甚大な損失を被っています。特にレジャーや接客部門では、レストランやバーを中心に50万人近くの雇用が減少しました。12月の失業率は6.7%と高止まりしており、労働市場への参加率は流行前の水準を大幅に下回っています。昨年春以降、労働市場には大きな進展が見られましたが、何100万人ものアメリカ人が依然として失業状態となっています。景気の悪化はすべてのアメリカ人に均等に降りかかっているわけではなく、負担能力の低い人々が最も大きな打撃を受けています。特にサービス業に従事する低賃金労働者やアフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系アメリカ人の失業率の高さは深刻です。経済的混乱は多くの人々の生活を狂わせ、将来への大きな不安をもたらしました。

 パンデミックは、インフレにも大きなインパクトを与えました。昨年春に大きく下落した消費者物価は夏には回復しましたが、最近は横ばいとなっています。パンデミックの影響を最も大きく受けたセクターでは、特に物価が低迷しています。全体として、年率のインフレ率は、長期目標である2%を下回っています。

 現在直面している問題を過小評価すべきではありませんが、部分的には改善もされており、今年後半の見通しでは改善が示されています。ワクチン接種が十分に普及すれば、パンデミックを収束させ正常な経済活動に戻すことができます。それまでの間、ソーシャルディスタンスを保つための対策を継続しマスクを着用することで、一日も早くその目標を達成できると思われます。財政政策は、家庭や企業が景気後退を乗り切り、経済への継続的なダメージを抑えるための支援となります。また、昨年の夏以降、家計や企業の適応力の高さもあって、経済は予想以上に回復しています。最後に、金融政策は景気回復を支える上で重要な役割を果たしており、今後もその役割を果たしていきます。

 危機に対する今回のFRBの対応は、米国民のために最大の雇用と物価の安定の達成に向けて推進するという使命と、金融システムの安定性の確保への責任に基づいて施策されるものです。本日、我々は、毎年1月に恒例となっている「長期的な目標と金融政策ストラテジーに関する声明」を全会一致で再確認しました。この声明で述べているように、私たちは、最大雇用を「広範かつ包括的な目標」と考えています。今後数年間で最大雇用を達成できるか否かは、長期的なインフレ期待が2%にしっかりと定着するかどうかに大きく依存します。当委員会が本日の政策声明で繰り返し述べたように、インフレ率が持続的に2%を下回っている状況では、暫くの間、インフレ率が2%を適度に上回ることを目指していきます。そうしたうえで、インフレ率が長期的に平均して2%となり、長期的なインフレ目標の2%にしっかりと定着すると想定しています。このような雇用とインフレの成果が得られるまで、金融政策は緩和的なスタンスを維持することを想定しています。金利については、労働市場の状況が当委員会が評価する最大雇用とインフレ率に合致する水準に達するまで、フェデラルファンドレートのターゲットレンジを現行の0~1/4%に維持することが適切であると考えています。そのうえで、最大雇用と物価安定の目標に向けて実質的な進展が見られるまで、財務省証券の保有額を毎月800億ドル以上、政府系住宅ローン担保証券の保有額を毎月400億ドル以上増やしていきます。昨年3月以来、バランスシートの拡大は、金融環境を大幅に緩和し、経済を大きく下支えしています。しかし、雇用とインフレは目標からはかなり乖離して離おり、大幅な改善が進むのにはしばらく時間がかかりそうです。

 フェデラルファンドレートに関するフォワードガイダンス(市場参加者に対し金融政策を将来どのように変化させるかについて明示する指針)は、バランスシートの指針とともに、経済回復が進む中で金融政策のスタンスが非常に緩和的であることを明確に示すものであります。私たちの指針は結果に基づいており、フェデラルファンドレートとバランスシートの経過を、雇用とインフレの目標達成に向けた道筋に結びつけています。全体として、私たちの金利とバランスシートの政策手段は経済を強力にサポートしており、今後もそうしていくことになります。

 また、経済における信用のフローをより直接的に支援するために、米国議会と財務省からの資金的な裏付けと支援を得て、緊急融資権をこれまでにない規模で提供しました。CARES法(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act;新型コロナウイルス対策の救済法)の枠組みでは新規の活動ができなくなりましたが、別な枠組みは引き続き利用できます。

 最後に、私たちは、私たちの行動が全国の地域社会、家族、企業に影響を与えることを理解しています。私たちのすべての行動は公的使命のために行われています。私たちは、経済を支えるためにあらゆる手段を駆使し、この困難な時期からの回復をできる限り強固なものにするべく尽力します。

 ありがとうございました。皆様からのご質問をお待ちしております。

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FOMC記者会見議事録(FRB、PDF)