3月17日 パウエル議長オープニング・ステートメント=FOMC記者会見 2021年03月19日 10時04分
FOMC終了後記者会見、パウエル議長のオープニング・ステートメント
2021年3月17日
- FRBはゼロ金利政策を維持し、金融緩和政策を継続する。
- 経済活動と雇用の指標は上昇に転じているが、サービス部門での個人消費は依然低い。
- 金融緩和政策と政府の財政施策が経済活動の回復に貢献している。
- 雇用は増加しているが、パンデミック前の水準を大きく下回っている。
- 失業率は6.2%(2月)と高い水準だが、今後低下していくと予測している。
- インフレは長期目標の2%を依然下回っているが、今後は上昇し、今年は2.4%となると予測する。
パウエル議長のオープニング・ステートメント(全文)
[日本語訳 ゴールデンチャート社]
こんにちは。まず最初に、パンデミックが米国に上陸してから丸1年が経過したことに触れたいと思います。振り返ってみると、急速に広がる世界的なパンデミックに対処するのは主に医療従事者や専門家の領域であることは明らかでした。そして私たちは、奉仕と犠牲の精神をもって働いているすべての人たちに感謝したいと思います。米国経済への危険性も明らかでした。米国議会は戦後以来これまで、どんな経済危機に対しても対策を施し、家計、企業、医療機関、州・地方政府への財政支援を提供してきました。
連邦準備制度理事会(FRB)はできるかぎり強力な回復を確実なものにし、経済への持続的なダメージを抑えられるように、救済手段の提供と安定性の確保のためのあらゆる手段を迅速に展開しました。私たちは議会から与えられた金融政策の目標として最大雇用と物価安定の達成に重大な責務を託されています。
そうした観点から、経済的な影響は実際、広範囲に及んでいますが、議会や政府機関、そして全米の市や町が迅速かつ断固とした行動をとったことで、最悪の経済的な困難のいくつかは回避されたといえます。これらの迅速かつ強力な政策措置の結果、より多くの人々が職を維持し、より多くの企業が営業を続け、より多くの収入が救済されました。そして、私たちはこうした前向きな進展を歓迎する一方で、誰も自己満足をすべきではありません。私たちFRBは、必要とする経済支援を可能なな限り提供し続けていきます。
本日、FOMCは金利をゼロ近傍に維持し、多額の資産購入を継続することとしました。これらの措置によって、金利およびバランスシートに関する強力なガイドラインに基づき、この金融政策が経済回復が達成されるまで強力な経済支援を提供し続けることが可能となります。
経済の先行きは、引き続きウイルスの行方とその感染を抑制するために行われる対策に大きく左右されます。1月以降、新規感染者数、入院患者数、死亡者数は減少しており、現在進行中のワクチン接種により、年内には通常の状態に戻ることが想定できます。それまでの間は、ソーシャルディスタンスやマスク着用を継続することで、一日も早くこの目標を達成することがでると思われます。景気回復にはまだムラがあり、完全な回復からは程遠く、先行きは不透明です。
昨年末に景気回復のペースが緩やかになった後、最近では経済活動や雇用に関する指標が上昇に転じていますが、ウイルス感染の再拡大やソーシャルディスタンス無視の影響を受け、経済界は依然として脆弱な状況のままです。家計消費のうち、モノに対する支出は今年に入ってからこれまでのところ顕著に増加しています。一方、家計のサービスへの支出は依然として低く、特に旅行や接客など、人を集団として集めるサービスは低い水準にあります。住宅部門は景気後退から完全に回復しており、設備投資や製造業の生産も回復しています。
昨年春以降、全般的な経済活動の回復は、家計、企業、地域社会に必要な支援を提供するための前例にない財政および金融政策措置がもららしたものです。この回復は大方の予想よりも早く進んでおり、FOMC参加メンバーによる今年の経済成長率の見通しは、12月に発表した経済見通しのサマリーよりも大幅に上方修正されています。参加メンバーは、見通しが上方修正されたことについて、予防接種の進展や直近の財政政策などが貢献したと指摘しています。
経済活動全体と同様に、労働市場の状況もこのところ好転しています。2月の雇用者数は38万9000人増加しました。これは、レジャーや接客部門が12月と1月に失った雇用の約3分の2を回復したためです。しかしながら、この分野の雇用は、パンデミック発生時の水準を300万人以上も下回っています。経済全体では、雇用者数はパンデミック前の水準より950万人減少しました。2月の失業率は6.2%と依然として高い水準にありますが、労働市場への参加率がパンデミック前の水準を大幅に下回っているため、この数字は雇用の不足を控えめに示していることになります。
今後、FOMC参加メンバーは、失業率が引き続き低下すると予測しています。中央値では、今年末に4.5%、2023年末には3.5%まで低下すると予測しています。景気の悪化はすべてのアメリカ人に均等にに降りかかっているわけではなく、負担能力の低い人々が最も大きな打撃を受けています。特に、サービス業に従事する低賃金労働者や、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系アメリカ人の失業率の高さは深刻です。経済の混乱は多くの人々の生活を狂わせ、将来への大きな不安を生み出しています。
全般的にインフレ率は、長期目標である2%を依然として下回っています。今後数カ月の間に、昨年3月と4月に観測された非常に低いインフレ率が計算から除外されるため、前年比のインフレ率は上昇するでしょう。このような「ベース効果」に加えて、経済の再開が続く中で消費が急速に回復した場合、特に供給のボトルネックによって短期的に生産が迅速にできない場合には、物価上昇の圧力がかかる可能性があります。しかし、このような一時的な物価上昇は、インフレ率に一過性の影響しか与えないと思われます。FOMC参加メンバーのインフレ予測の中央値は、今年は2.4%、来年は2%に低下した後、2023年末までに再び上昇に転じることを示しています。
今回の危機に対するFRBの対応は、米国民のために最大の雇用と物価の安定を達成に向けて推進するという使命と、金融システムの安定性の確保への責任に基づいて施策されたものです。「長期的な目標と金融政策ストラテジーに関する声明」で述べているように、私たちは最大雇用を「広範で包括的な目標」と考えています。今後数年間で最大雇用を達成できるかどうかは、長期的なインフレ期待が2%にしっかりと定着するか否かに大きく左右されます。当委員会が本日の金融政策に関する声明で繰り返し述べているように、インフレ率が持続的に2%を下回っている現状では、暫くの間、2%を適度に上回るインフレ率を達成することを目指していきます。そして、その後、インフレ率が長期的に平均して2%となり、長期的なインフレ期待が2%にしっかりと固定されるようになると想定できます。このような雇用とインフレの成果が得られるまで、金融政策は緩和的なスタンスを維持していくことを考えています。金利に関しては、労働市場の状況が当委員会が評価する最大雇用に合致するレベルに達し、インフレ率が2%に上昇し、しばらくの間2%を適度に上回る軌道に乗るまでは、フェデラルファンドレートのターゲットレンジを現在の0~1/4%に維持することが適切であると想定しています。今年起こりそうな2%を超える一時的なインフレ率の上昇は、この基準を満たさないことに留意したいと思っています。
さらに、最大雇用と物価安定の目標に向けて実質的な進展が見られるまで、財務省証券の保有額を毎月800億ドル以上、政府系住宅ローン担保証券の保有額を毎月400億ドル以上増やし続けます。昨年3月以降のバランスシートの拡大は、金融環境を大幅に緩和し、経済を大きく下支えしています。しかし、現状は雇用と物価安定の目標からはかなり離れており、実質的な前進を達成するにはなお時間がかかるでしょう。
フェデラルファンドレートに関するフォワードガイダンス(市場参加者に対し金融政策を将来どのように変化させるかについて明示する指針)は、バランスシートの指針とともに、経済回復が進む中で金融政策のスタンスが非常に緩和的であることを明確に示すものであります。私たちの指針は結果に基づいており、フェデラルファンドレートとバランスシートの経過を、雇用とインフレの目標達成に向けた道筋に結びつけています。全体として、私たちの金利とバランスシートの政策手段は経済を強力にサポートしており、今後もそうしていくことになります。
最後に、私たちは、私たちの行動が全国の地域社会、家族、企業に影響を与えることを理解しています。私たちのすべての行動は公的使命のために行われています。私たちは、経済を支えるためにあらゆる手段を駆使し、この困難な時期からの回復をできる限り強固なものにするべく尽力します。
ありがとうございました。皆様からのご質問をお待ちしております。
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