FRB、利上げ年内6回を想定、まもなく量的引き締め開始へ 2022年03月19日 14時52分

[ゴールデンチャート社]2022年3月19日

 米連邦準備制度委員会(FRB)は3月16日、ゼロ金利政策を解除、政策金利の0.25%引き上げを発表した。同日、米連邦公開市場委員会(FOMC)の経済見通しも公表された。それによると今後2022年内に6回、2023年に3回の利上げが予想される見通しとなった。また、パウエル議長はFOMC終了後の記者会見で「次回会合(5月)でバランスシートの縮小開始の決定を予定している」と述べた。今回のFOMCではゼロ金利政策から金融引き締めへの政策転向となる決定をし、一つの節目を越えた。

 3月16日(現地時間)のNY外為市場ではドル買い・円売りが進み、円は119円台に下落。ダウ平均は前日比518.76ドル高、ナスダックは487.93ポイント高で終了。翌17日、東京株は急伸、日経平均は前日比890.88高で終了。「事前想定の通りに0.25%の利上げ、イベントを無事通過した安心感から急伸」と時事通信ニュースは伝えている。

 FOMCの経済見通しは、前回(2021年12月)に比べ大きく変化している。2022年のGDP成長率の予想値は4.0%から2.8%に鈍化、コアPCEの予測値は2.7%から4.1%に上昇している。インフレが沈静化する気配がなく終息時期が見通せない中、GDP成長率が鈍化するとの見通しに変化している。パウエル議長は記者会見の冒頭、 「ロシアのウクライナ侵攻による人的被害は悲劇的であり、世界や米国の金融と経済への影響は極めて不透明である」と述べている。ロシアへの経済制裁がエネルギー価格や穀物価格を上昇させ、これがインフレ上昇の要因に加わることなり、世界経済の減速を加速させる構図となっている。

 2022年の政策金利の予想は、昨年12月時点では0.9%であったが、今回1.9%に上がっている。ドットプロットを見るとドットの集合が縦長に見える。これはFOMC参加メンバーの予想が大きく分散していて、意見が分かれていることの証左となっている。2022年の利上げ回数の予想は、中央値をベースに6回(0.25%で換算)とされているが、これはあくまで現時点での予想に過ぎない。今後、経済環境の変化によって利上げのペースが変わってくる余地は十分あると考えておく必要がある。

 バランスシートの縮小プロセスは予想は難しい。約9兆ドルにまで積み上っているとされる資産をどのようなペースでどの程度の残高まで削減するのか、FOMCでは次回の会合に向け議論されているとみられる。4月6日に公表されるFOMC議事録で確認したい。


 ※ FRB発表の FOMC Projections materialsを基にゴールデンチャート社が作成

(H・N)

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