金融政策を急ぎ調整する必要はない=パウエル議長FOMC記者会見スピーチ 2025年01月30日 10時12分
連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は、1月29日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、フェデラルファンドレート(FF金利)の目標レンジを4.25~4.50%に維持を決定した理由として、「過去3回の会合で政策金利をピーク時から1%引き下げました。インフレの改善と労働市場の再均衡化を踏まえると、政策スタンスの再調整は適切でした。政策スタンスが以前よりも大幅に緩和され、経済も堅調であるため、政策スタンスを急いで調整する必要はありません」と述べました。
パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ
[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2025年1月30日
私たちは、米国国民のために「最大雇用」と「物価安定」という2つの責務の目標を達成することに引き続き全力を傾けています。 米国経済は全体として堅調であり、この2年間で目標に向けて著しい進展を遂げました。 労働市場の状況は以前の過熱状態から落ち着き、堅調さを維持しています。 インフレ率は依然としてやや高止まりしているものの、FRBの長期目標である2%にかなり近づいています。
こうした目標を支えるため、本日、連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利を据え置き、保有証券の縮小を継続することを決定しました。
最新の経済指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示しています。2024年は全般としてGDPは回復力に富んでいる個人消費に支えられ、2%を上回る伸びを示したようです。設備や無形資産への投資は第4四半期には減速したようですが、通年では堅調でした。昨年前半の低迷の後、住宅部門の活動は安定化しているようです。
労働市場では、状況は依然として堅調です。この3カ月間、給与所得者の雇用増加数は月平均17万人でした。失業率は、以前の増加に続いて昨年半ば以降は安定しており、12月には4.1%と依然として低水準を維持しています。名目賃金の伸びは過去1年間で鈍化しており、雇用者数と労働者数の差は縮小しています。全体として、幅広い指標が労働市場の状況はおおむね均衡していることを示唆しています。労働市場は大幅なインフレ圧力をもたらす要因ではありません。
過去2年間でインフレは大幅に緩和しましたが、2%という長期的な目標値と比較すると依然としてやや高い水準にあります。消費者物価指数(CPI)やその他のデータに基づく推計によると、昨年12月までの12カ月間における個人消費支出(PCE)物価指数の総合指数は2.6%上昇し、変動の大きい食料品とエネルギーを除いたコアPCE物価指数は2.8%上昇しました。長期的なインフレ期待は、家計、企業、および予測者に対する広範な調査や金融市場の指標に反映されているように、依然として十分に定着しているようです。
私たちの金融政策は、米国国民のために「最大雇用」と「安定した物価」を促進するという二重の責務に基づいて実施されています。私たちは、雇用とインフレの目標達成に対するリスクはおおむね均衡していると考えており、私たちの責務の両側面におけるリスクに注意を払っています。
過去3回の会合において、政策金利をピーク時から1%引き下げました。インフレの改善と労働市場の再均衡化を踏まえると、政策スタンスの再調整は適切でした。政策スタンスが以前よりも大幅に緩和され、経済も堅調であるため、政策スタンスを急いで調整する必要はありません。本日の会合において、当委員会はフェデラルファンドレート(FF金利)の目標水準を4.25~4.50%に維持することを決定しました。
金融引締めを急ぎ過ぎたり、強め過ぎたりすると、インフレの改善を妨げる可能性があることは認識しています。同時に、金融引き締めをあまりにもゆっくり、あるいはあまりにも小幅に縮小すると、経済活動や雇用が過度に弱まる可能性があります。FF金利の目標レンジの追加調整の規模や時期を検討するにあたり、当委員会は、入手するデータ、変化する見通しおよび、リスクのバランスを評価します。私たちはあらかじめ決められた道筋を歩んでいるわけではありません。
経済が変化するにつれ、私たちは「最大雇用」と「物価安定」という目標を最も効果的に促進する方法で政策スタンスを調整していきます。経済が堅調さを維持し、インフレ率が持続的に2%に向かって進まない場合には、より長期にわたって金融引締め政策を維持することができます。労働市場が予想外に弱まるか、インフレ率が予想以上に急速に低下する場合には、それに応じて金融政策を緩和することができます。金融政策は、私たちが直面するリスクや不確実性に対処する上で、適切な位置づけにあります。
以前にお知らせしたように、金融政策の枠組みに関する5年ごとの見直しが今年実施されます。今回の会合では、当委員会はまず、2020年に終了した前回の見直しの背景と結果、および他の中央銀行の見直し実施の経験について検討しました。今回の見直しでも、幅広い関係者を対象としたアウトリーチ活動(*1)や公開イベントが実施される予定であり、その中には、全米で開催される「Fed Listens」イベントや5月に開催される研究会議も含まれます。このプロセス全体を通じて、私たちは新しいアイデアや批判的なフィードバックを受け入れ、過去5年間の教訓を踏まえて結論を導き出します。私たちは、この見直しを夏が終わる頃までに完了させる予定です。なお、当委員会の2%という長期的なインフレ目標は維持され、見直しの対象とはなりません。
(*1)アウトリーチ活動 ; 必要な人に必要なサービスや情報をさまざまな形態で届けること
FRBには、金融政策に関して2つの目標が課されています。「最大雇用」と「物価の安定」です。私たちは引き続き「最大雇用」の支援、2%というインフレ率の持続的な達成、そして長期的なインフレ期待の適切な維持に全力を尽くします。これらの目標の達成における私たちの成功は、すべてのアメリカ国民にとって重要な意味を持ちます。私たちの行動が、全米の地域社会、家庭、企業に影響を与えることを私たちは理解しています。私たちの行動はすべて、この公共の使命に奉仕するものです。FRBは「最大雇用」と「物価の安定」という目標の達成に向けて全力を尽くします。
[ゴールデンチャート社]
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FOMC記者会見議事録(FRB原文)