【2024年1月22日~23日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2024年01月31日 17時45分

金融政策決定会合における主な意見(2024年1月31日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国経済は、緩やかに回復しており、先行きも緩やかな回復を続けるとみられる。ただし、経済・物価の不確実性は、引き続き、きわめて高い。
  • 能登半島地震が経済に及ぼす影響については、丹念に調査・分析していく必要がある。
  • 国内経済は、全体として底堅く、緩やかな回復を続けている。企業からは、収益が改善するもと、人手不足に対する危機感、賃上げについての前向きな声が以前にも増して聞かれるほか、資材価格上昇により先延ばししていた設備投資計画を再開する動きもみられる。
  • わが国経済の現状は、海外経済に不確実性の高さがあるもとで、輸出や設備投資における幾分の弱さから冴えないものの、海外経済が回復すれば、回復基調を強めていくと思われる。
  • 物価が上昇する中でも、雇用・所得環境は緩やかに改善しているほか、政府による物価対策など諸施策の効果もあって、消費者のセンチメントは今のところ維持されている。
  • 日本経済は、効率重視モデルから付加価値重視モデルへの転換が遅れ、低付加価値構造から抜け出せていない。新たな輸出産業の育成や、中堅企業・比較的規模の大きな中小企業の成長やスタートアップの躍進が重要である。

(2)物価

  • 賃金と物価の好循環が強まり、基調的な物価上昇率が2%に向けて徐々に高まっていくという見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている。
  • 既往の輸入物価上昇の価格転嫁に伴う物価上昇圧力は、明確に和らいできている。
  • 財価格の上昇率が今後もさらに下がっていく一方、サービス価格の上昇率は、春季労使交渉での賃上げに支えられて上がっていくとみられる。このため、全体として消費者物価は、どちらの影響が強く出るかによって変動しつつも、当面概ね2%前後で推移していくだろう。
  • サービス価格の上昇を踏まえると、賃金上昇に伴う物価上昇圧力は高まりつつあるとみられるが、2%の「物価安定の目標」の達成が十分な確度をもって見通せる状況にまでは至っていない。
  • 今春の労使間の賃金交渉の結果が、昨春の実績を上回る可能性が出てきており、賃金と物価の好循環の実現の機運が高まっている。
  • 前回会合以降のデータ等をみると、①中小企業も含めて賃上げに期待が持てる、②人件費上昇を受けてサービス価格も高い伸びを続けている、ことから賃金と物価の好循環実現の確度は更に着実に高まったと捉えられる。
  • 賃金上昇分の転嫁には一部課題が残るものの、価格転嫁は一般的との受け止めが拡がっているほか、本年の賃金上昇率は昨年を上回る蓋然性が高い。不確実性はあるものの、「物価安定の目標」の実現が見通せる状況になってきた。
  • 大手企業の賃上げ率が高まり、取引先企業による賃金の価格転嫁が認められやすくなれば、需要増加とともに物価も上昇する経済の順回転が生まれると期待される。このため、本年のベースアップの水準に注目している。

2.金融政策運営に関する意見

  • 現時点では、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には、なお至っておらず、イールドカーブ・コントロールのもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要がある。この先、賃金と物価の好循環を確認し、目標の実現が見通せる状況に至れば、マイナス金利を含む大規模金融緩和策の継続の是非を検討していくことになると考えている。
  • 2%の「物価安定の目標」を実現するためには、賃金が2%を明確に上回る状況が継続するとともに、賃金と物価の好循環が一段と強まっていくことが必要である。
  • 今春の賃金改定は過去対比高めの水準で着地する蓋然性が高まっているほか、経済・物価情勢が全体として改善傾向にあることを踏まえると、マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満されつつあると考えられる。
  • 2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現の確からしさについて、具体的な経済指標を確認することで見極めていく段階に入ったと考えられる。
  • 能登半島地震の影響を今後1~2か月程度フォローし、マクロ経済への影響を確認できれば、金融正常化が可能な状況に至ったと判断できる可能性が高い。
  • 2%の「物価安定の目標」の実現が十分な確度をもって見通せる状況ではないものの、物価安定目標の達成が現実味を帯びてもきているため、出口についての議論を本格化させていくことが必要である。
  • 政策変更のタイミングがどうなるにせよ、その前後で市場に不連続な動きを生じさせないよう、コミュニケーション、オペレーションの両面で工夫する必要がある。こうした観点からも、現段階から、マイナス金利やイールドカーブ・コントロールの枠組みの解除についての基本的な考え方を、各時点で可能な範囲で少しずつ、対外説明していくことは、有益である。
  • 現時点での経済・物価見通しを前提とすると、先行きマイナス金利の解除等を実施したとしても、緩和的な金融環境は維持される可能性が高い。
  • 出口以降の金利パスについてあらかじめ見極めることは難しく、その時々の経済・物価・金融情勢に応じて考えていかざるを得ない。
  • どのような順番で政策変更を進めていくかはその時の経済・物価・金融情勢次第だが、副作用の大きいものから修正していくのが基本である。
  • 従来のきわめて強い金融緩和からの調整を検討していく重要な局面である。その際、イールドカーブ・コントロールやマイナス金利政策の在り方を議論するほか、オーバーシュート型コミットメントの検討も必要である。ETFとJ-REITの買入れについては、大規模緩和の一環として実施してきたものであり、2%目標の持続的・安定的な
  • 実現が見通せるようになれば、買入れをやめるのが自然である。2021年3月の買入れ方針の転換以降、買入れ額は非常に小さくなっており、買入れをやめても市況等への影響は大きくないと考えられる。
  • 賃金上昇を伴う物価上昇を持続的なものにするには、コア事業強化による企業の稼ぐ力の向上と顧客満足度の向上のための人材価値を高める経営が必要であり、それらの進捗に注目したデータに基づいた判断が重要である。
  • 経済・物価情勢に応じて、金融正常化の道のりをゆっくりと進めていくためには、金融正常化の第一歩であるマイナス金利の解除に、適切なタイミングで踏み切る必要がある。判断が遅れた場合、2%目標の実現を損なうリスクや急激な金融引き締めが必要となるリスクがある。
  • 海外の金融政策転換で政策の自由度が低下することもあり得る。現在は千載一遇の状況にあり、現行の政策を継続した場合、海外を中心とする次の回復局面まで副作用が継続する点も考慮に入れた政策判断が必要である。

3.政府の意見

(1)財務省

  • 政府としては、令和6年度予算について、通常国会への提出に向け作業を進めている。本予算は、「物価に負けない賃上げの実現」に向けた取り組みの推進等、わが国が直面する構造的課題に的確に対応するものである。
  • また「令和6年能登半島地震」の対応として、一般予備費について増額し、計1兆円とする決定をした。
  • 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

(2)内閣府

  • 政府としては、能登半島地震の被災者の生活・なりわいの再建を始め、被災地の復旧・復興に切れ目なく対応していく。
  • 労務費転嫁の新しい指針や賃上げ税制の拡充、省力化投資支援など、あらゆる政策を総動員し、物価上昇を上回る賃上げの実現を目指す。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、賃金の上昇を伴う形での2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向け、適切な金融政策運営を行うことを期待する。

以上


[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2024年1月22日、23日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)