【2023年12月18日~19日】総裁定例記者会見(要約) 2023年12月20日 16時07分

総裁記者会見要約(2023年12月20日)

1.今回の決定内容について

  • 長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールのもとでの金融市場調節方針とその運用、また資産買入れ方針について、いずれも現状維持とすることを、全員一致で決定

2. 国内の経済・物価動向の現状と先行きについて

(1)景気

  • 景気の現状は、緩やかに回復していると判断
  • 先行きは、当面は海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみている
  • その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる

(2)物価

  • 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているが、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足元は3%程度となっている
  • 先行きは、来年度にかけて既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が残ることなどから、2%を上回る水準で推移するとみられる
  • その後は、これらの影響の剥落から、前年比のプラス幅は縮小すると予想される
  • この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくと考えている

3.賃金上昇を伴った2%の物価上昇の持続的・安定的な達成、賃金と物価の好循環への距離感について、達成に向けた確度は高まっているか

  • 最近発表された12月短観等、各種統計から賃金を巡る環境をみると、労働需給が一段と引き締まる方向にあることや、企業収益の改善が継続していることが確認される
  • 来年の春季労使交渉に向けた動きをみると、労働組合からは今年を上回る賃上げを要求する方針が示されているほか、大企業を中心に、一部の経営者から賃上げについて前向きな発言もみられている
  • 物価情勢をみると、既往の輸入物価上昇の価格転嫁の影響が徐々に和らいでいる一方で、サービス価格等は、人件費上昇なども背景に、緩やかに上昇幅を拡大する方向にある
  • ヒアリング情報によると、先行きの経済情勢に対する不確実性が高いこともあり、現時点で、来年の賃上げについて、方針を固めきれていない先も多くなっている。また、価格設定面においても、中小企業を中心に、人件費や間接費の上昇の販売価格への転嫁については容易でないとの声も聞かれている。
  • こうした点を踏まえると、基調的な物価上昇率が、2025年度にかけて物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくという見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まってきているとは思うが、先行き、賃金と物価の好循環が強まっていくか、なお見極めていく必要があると判断してる

4.安定的な物価上昇の達成見通しを判断するうえで、どのようなデータや情報を重視して政策変更を検討するのか

  • 2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現を見通すうえでは、賃金と物価の好循環が強まっていくか確認することが重要と考えている
  • 物価から賃金への波及の面では、例えば、労使交渉を含めた賃金の動向、その前提となる労働需給や企業収益動向などを確認していく
  • 賃金から物価への波及の面では、企業の価格設定スタンスや様々な物価指数の動向、特にサービス価格の動向等をみていきたいと考えている
  • いずれの側面についても、データだけでなくヒアリング情報を含め、丹念に点検していくつもり

5.物価に関する見方はどう変化したか

  • 私どもは時々使っている表現で、「第一の力」や「第二の力」というのがあるが、「第一の力」の方をみると、様々な指標等から、ようやくピークアウトしつつあるかなという感じがみえる。例えば食料品等の価格の落ち着き。
  • これに対して「第二の力」の方は、これはサービス価格が緩やかに上昇しているということ等から判断して、少しずつ上昇が継続しているというふうにみている
  • この点、私どもの表現ぶりが、見通し期間終盤にかけて高まっていくというふうに前、書いていたところが抜けているというご指摘ですが、ちょっと気付かなかったんですが、そこについては特に見方を変えたということではなくて、非常に大まかに言えば、これまでの見方に沿って上がってきている、「第二の力」のところですが、というふうに考えている。ただ、物価安定目標を十分な確度を持って見通せる状態にはまだ至っていないという最初に申し上げた判断に、現状ではある。


[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

FED&日銀ウォッチ

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

総裁記者会見要旨(2023年12月18、19日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)