【2023年10月30日~31日】総裁定例記者会見(要約) 2023年11月02日 14時05分
総裁記者会見要約(2023年11月1日)
1.今回の決定内容について
- 長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールについて、短期政策金利-0.1%、10年物国債金利の操作目標ゼロ%程度という水準を、いずれも現状維持とすることを、全員一致で決定
- 資産買入れ方針についても、現状維持とすることを全員一致で決定
- そのうえで、イールドカーブ・コントロールの運用を更に柔軟化することを賛成多数で決定。具体的には、長期金利の上限のめどを1.0%とし、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととした。
2. 国内の経済・物価動向の現状と先行きについて
(1)景気
- 景気の現状は、緩やかに回復していると判断
- 先行きは、当面は海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみている
- その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる
(2)物価
- 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているが、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足元は2%台後半となっている
- 先行きは、来年度にかけて2%を上回る水準で推移した後、2025年度はプラス幅が縮小すると予想される
- こうした物価の見通しは、7月の展望レポートから上振れているが、その主因は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が長引いていることや、このところの原油価格の上昇
3.イールドカーブ・コントロールの緩和効果と副作用のバランスをどう評価して、今回の更なる柔軟化に踏み切ったのか
- 今回の措置は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、イールドカーブ・コントロールの運用において、柔軟性を高めておくことが適当との判断に基づくもの
- 現状において、原則として毎営業日1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなり得ると判断し、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うことにした
- 今後は1%の上限金利のめどのもとで、大規模な国債買入れを継続するとともに、長期金利の水準や変化のスピード等に応じて機動的にオペで対応することで、イールドカーブ・コントロールを運用していくことになるが、その際、買入れ額の増額や臨時買入れなどの対応は、1%を下回る水準で行うこともあると考えている。また必要に応じて指値オペも活用することがあると思うが、その利回りは金利の実勢等を踏まえて適宜決定する。長期金利の厳格な上限は設定しないが、こうした調節運営のもとで、長期金利に上昇圧力がかかる場合であっても、1%を大幅に上回るとはみていない。
4.今回の長期金利の上限の見直しについて、その上限に辿り着く前に上限を見直していくということは、上限の持つ意味合いが形骸化していくということもあると思うが
- 上限に達していないのに何で動くんだというご質問だと思うが、上限に張り付いて、強いオペ(連続指値オペ)を打って、それで副作用が発生してからというよりは、その少し前の段階で動きたいという判断のもとに、今日も修正、更なる柔軟化を実行した
5.市場では来年1~3月頃にマイナス金利が解除されるのではないかという見方が広がっているが
- 日銀の目標達成の見通しが、どういうときに得られるかということに関連した質問だと思うが、基本的には物価上昇が、賃金上昇に跳ね返るということ、これが続いていくということ。それから裏側で、賃金が上がったことが、物価、特にサービス価格等をまた引き上げていくこと。この両方がぐるぐる、物価でいえば2%に近いところで回り続けるということが必要、あるいはそういうふうになりそうだという見極めが必要かと思っている
- そういう観点からは、取りあえず今後については、来年の春季労使交渉は一つの重要なポイントであるし、その前後、ここまで上がってきた賃金が物価にどれくらい跳ねているかということを丹念に確認するという作業も、引き続き必要になるというふうに考えている
[ゴールデン・チャート社]
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■参考資料(外部サイト)
総裁記者会見要旨(2023年10月30、31日開催分)(日本銀行)