【2023年9月21日~22日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2023年10月02日 14時11分

金融政策決定会合における主な意見(2023年10月2日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国経済は、緩やかに回復しており、先行きも緩やかな回復を続けるとみられる。ただし、経済・物価の不確実性は、引き続き、きわめて高い。
  • わが国経済は、海外需要の低迷から企業の設備投資に幾分弱い動きがみられるものの、個人消費が緩やかながらも拡大基調を維持しており、総じてみれば緩やかな回復を続けている。
  • 国内経済は全体として底堅く推移している。生産活動は、海外からの受注が伸び悩み横ばい圏内であるものの、個人消費は人流データや小売企業の決算等をみると底堅く推移しているとみられる。
  • これまでのペントアップ需要の顕在化は限られており、個人消費の動向については、今後特によく見ていく必要がある。基調的な物価指標の動きや水準からすると、消費者物価上昇率が「物価安定の目標」を大きく上回った状態が相当期間続き、個人消費を圧迫し続ける可能性はそれなりにある。
  • 構造改革を進めてきた大企業は「稼ぐ力」に自信を深めていると思われるが、中小企業は総じて構造改革が遅れ、賃上げ余力が不十分な先も多い。こうした先が、経済環境の変化により賃上げや設備投資の意欲を削がれることがないか、注意が必要である。

(2)物価

  • 消費者物価をみると、輸入物価の下落に遅行して、漸く財価格の伸び率が低下しつつある。この点を踏まえると、先行きの物価上昇率は鈍化していく可能性が高いと考えられる。
  • 消費者物価上昇率は2%を上回る状況が続いているが、依然として輸入物価上昇の価格転嫁が主因である。今後も輸入物価上昇の価格転嫁が長引くことで、消費者物価上昇率が上振れた状況がしばらく続く可能性がある。
  • 消費者物価は、運送料や公共サービス料金の値上げが想定されるもと、来年度も上昇が続くと考えられる。
  • 値上げの持続性という面では、今後ペントアップ需要が減衰していく中でも、最近みられるような価格設定行動を続けられるかは重要である。
  • 企業の賃金・価格設定行動の一部には、従来よりも積極的な動きがみられ始めている。
  • 企業の前向きな賃金設定スタンスが広がりつつあるほか、設備投資意欲も維持されていることを踏まえると、賃金上昇を伴った物価上昇につながる好循環が生まれつつあると考えられる。
  • 市場の物価上昇率の見通しが昨年対比高まっているほか、大幅に上昇した最低賃金を将来に亘り更に引き上げるという政府方針表明等の動きもあり、来年の賃上げ率が本年を上回る可能性も十分にある。
  • 持続的な賃上げには、賃金・価格設定行動の変革や慢性的労働力不足への対応が必要である。企業が物価上昇に対応するベースアップを前提に事業戦略を推進するのか、賃金制度改革への取り組みも含め、注目している。
  • 価格転嫁が根強く続いていること、および為替円安と原油高から、物価上振れの可能性は高まっているが、これらはコストプッシュ要因に関するものである。政策対応との関係でより重要なのは、賃金上昇による価格上昇であるが、現状、この面から上振れが起こるのであれば、むしろ望ましいことである。
  • 足もとの物価の強さ、更には、為替相場や原油価格の推移をみると、今後、物価が想定ほど下がらず上振れしていくリスクも相応にあり、謙虚にデータを見つめていく必要性が、従来以上に高まっている。

2.金融政策運営に関する意見

  • 現時点では、賃金の上昇を伴う形で、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、イールドカーブ・コントロールのもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要がある。
  • 金融緩和の継続を通じて賃上げのモメンタムを支え続けることが必要である。
  • 先行きの物価見通しが上振れるかが不透明な中、運用を柔軟化した現行のイールドカーブ・コントロールのもとで、物価動向を見極めることが重要である。
  • イールドカーブ・コントロールの運用の柔軟化により、長期金利は比較的安定しており、追加的な見直しを行う必要はない。
  • 日本銀行は「賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指して」いるのであって、その実現に「必要な時点まで」イールドカーブ・コントロールの枠組みを継続すると約束している。当然のことながら、イールドカーブ・コントロールの枠組みの撤廃やマイナス金利の解除は、あくまで、2%実現との関係で、その成功とセットで論じられるべきことである。
  • 2%の物価安定目標を持続的に実現するためには、賃金上昇が定着し、それが価格転嫁されることでサービス価格を中心とした物価上昇が定着することが必要である。この点、賃金上昇のモメンタムが中小企業を含めて着実に強まっていくのか、賃金上昇に伴う労働コストの価格転嫁が着実に進んでいくのかという点に注目している。
  • 予想物価上昇率に上昇の動きがみられ、やや距離はあるが、「物価安定の目標」の達成に近づきつつあるため、今年度後半は、来年に向けた賃上げ動向も含め、その見極めの重要な局面となる。
  • 物価目標達成の期待が確信に変わるには、企業の改革への取り組みに加え、新陳代謝やスタートアップ企業の資金調達強化等の取り組みが必要である。日本経済は今が正念場であり、企業の改革意欲を後押しすることが求められる局面である。
  • 政策修正の時期や具体的な対応については、その時々の経済・物価情勢や見通しに依存するため、不確実性が大きい。現時点で決め打ちできる段階ではない。
  • 経済・物価の不確実性が高い状況を踏まえると、様々なコミュニケーションを通じた実質上のガイダンスについても、政策対応の時期や順序についての自由度が過度に制約されないよう工夫していくことが望ましい。
  • 「2%の持続的・安定的な物価上昇」の実現が、はっきりと視界に捉えられる状況にあると考えており、来年1~3月頃には見極められる可能性もある。①流動性の確保・回復等による市場機能の改善、②出口を見据えた市場や社会とのコミュニケーション等、出口に向けた準備、環境整備を進めることがリスク・マネジメント上、重要である。
  • イールドカーブ・コントロールの柔軟化により、市場機能に一部改善の動きがみられるが、柔軟化を経ても、市場不安定化のリスクや市場機能面での副作用はなお残存している。イールドカーブ・コントロールは、この間の歴史をみても、多くの役割を果たした段階と考えられる。
  • 仮にマイナス金利を解除しても、実質金利がマイナスであれば金融緩和の継続であると捉えられる。こうしたことを、丁寧に発信していくことが重要である。
  • 当面は緩和的な金融緩和の維持が望ましいが、将来の出口局面にあたっては、イールドカーブ・コントロールのみならず、国債以外の資産買入れの要否についても検討すべきである。

3.政府の意見

(1)財務省

  • 8月末に概算要求が締め切られ、令和6年度予算の編成作業がスタートした。
  • 予算編成にあたっては、歳出構造を平時に戻していくとともに、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させないよう取り組むといった「骨太方針2023」に記された方針に沿って、経済成長と財政健全化の両立を図っていく。
  • 日本銀行には、政府との密接な連携のもと、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

(2)内閣府

  • 政府は、物価高から国民生活を守るとともに、物価高に負けない構造的な賃上げと供給力強化のための投資拡大の流れを強化するための経済対策を検討していく。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する。

[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2023年9月21日、22日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)