【2023年7月27日~28日】総裁定例記者会見(要約) 2023年08月01日 08時49分

総裁記者会見要約(2023年7月31日)

1.今回の決定内容について

  • 長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールについて、て短期政策金利-0.1%、10年物国債金利の操作目標ゼロ%程度という水準を、いずれも現状維持とすることを全員一致で決定
  • そのうえで、イールドカーブ・コントロールの運用を柔軟化することを賛成多数で決定
  • 資産買入れ方針を現状維持とすることを全員一致で決定

2. 国内の経済・物価の現状と先行きについて

(1)景気

  • 景気の現状は、緩やかに回復していると判断
  • 先行きは、当面は海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみている
  • その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる

(2)物価

  • 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小していますが、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足元は3%台前半となっている
  • 先行きはそうした価格転嫁の影響が減衰していくもとで、プラス幅を縮小した後、マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の価格設定行動などの変化を伴うかたちで、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみている
  • 物価は4月の展望レポートの見通しを上回って推移しており、本年の春季労使交渉などを背景に賃金上昇率は高まっている。企業の賃金・価格設定行動に変化の兆しが窺われ、予想物価上昇率も再び上昇する動きがみられている。

3.運用の柔軟化の具体的内容について

  • 長期金利の操作目標はゼロ%程度、変動幅は±0.5[%]程度に維持したうえで、現在の変動幅の位置付けをめどとして、イールドカーブ・コントロールを従来よりも柔軟に運用する
  • これに伴い、市場の状況によっては、長期金利はその範囲、ゼロ±0.5%程度を超えて動くこともあると考えている
  • ただし、1%を超えて長期金利が上昇しないように1%の水準では連続指値オペで金利上昇を抑制する
  • 0.5%から 1%の範囲では、長期金利の水準や、変化のスピード等に応じて機動的に国債買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施することで、過度な金利上昇圧力を抑制する

4.長期金利1%について、1%までは認めるというメッセージなのか、もしくは1%に行かせないというメッセージなのか

  • 長期金利の操作目標はゼロ%程度、変動幅±0.5%に、ここは維持したうえで、変動幅の位置付けをめどとして、柔軟化したもの
  • ここまでの、足元、長期金利の動きをみると、わずかだが0.5%を下回る水準で推移してきている。今後、仮に 0.5%を超えて動く場合には、長期金利の水準や変化のスピード等に応じて機動的に対応することになる。そうしたもとで長期金利が1%まで上昇することは想定していないが、念のための上限キャップとして1%とした。

5.YCC柔軟化を行ったタイミング

  • 今回発表した経済・物価見通しにおいて、足元23年度の物価見通しをかなり大幅に修正した。これは、4月時点の見通しは、やや過小、あるいはかなり過小であった。その分、上振れ方向にかなり大幅にずれた。そういう不確実性をやや過小評価していた可能性が4月時点ではあるということ
  • また、24年度、25年度の物価見通しについては上振れリスクを意識している委員が多い。つまり、不確実性がきわめて高い。他方で実質GDPの方はやや下振れリスクをみている委員も多いという意味でも不確実性が高いということ
  • こういった状況を踏まえ、YCCの場合は上振れリスクですが、これが顕在化した後で対応しようとするとなかなか大変なことになる、あるいは副作用をすごい大きくしてしまうということがある
  • そのため、現在、一応債券市場の環境はここまで相対的に落ち着いてきたというふうに考えられる中で、将来の不確実性を今回改めて認識したということなので、対応措置、枠組みの手直しをするのにちょうど良いタイミングではないかなというふうに思った

[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

FED&日銀ウォッチ

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

総裁記者会見要旨(2023年7月27、28日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)