【2023年4月27日~28日】総裁定例記者会見(要約) 2023年05月02日 08時55分

総裁記者会見要約(2023年5月1日)

1.今回の決定内容について

  • 長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールのもとでの金融市場調節方針について、長短金利操作の運用も含め、現状維持とすることを全員一致で決定
  • 資産買入れ方針に関しても、現状維持とすることを全員一致で決定
  • 過去25年間に実施してきた金融政策運営について、多角的なレビューを実施することを決定

2. 経済・物価の現状と先行きについて

(1)景気

  • 現状については、既往の資源高の影響などを受けつつも、持ち直している
  • 先行きは、今年度半ば頃にかけては、既往の資源高や海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかに回復していく
  • その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、 潜在成長率を上回る成長を続けるが、見通し期間終盤にかけて、成長ペースは次第に鈍化していく可能性が高い

(2)物価

  • 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているが、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足元は3%程度になっている
  • 先行きは、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとで、今年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくと予想
  • その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の価格・賃金設定行動などの変化 を伴うかたちで、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、 振れを伴いながらも、再びプラス幅を緩やかに拡大していく

3.物価高が家計や企業の重荷ともなっており、こうした環境の中でも、 物価押し上げに作用する大規模緩和を継続する必要性と物価の更なる上振れリスクについて

  • 引き締めが遅れて2%を超えるインフレ率が持続するリスクよりも、拙速な引き締めで2%を実現できなくなるリスクの方が大きく、基調的なインフレ率の上昇を待つことのコストは大きくないというふうに判断している
  • 従って、従来方針通り2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続し、マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する

4.2%の物価目標の達成に一段と近づいた、もしくは視野に入ってきたというような考えか

  • 多くの委員が持っている今年度の後半の2%を下回るところからもう一回上がってくるという見通しにおいて、下がっていくところまではある程度の確度でみえているが、反転してまた上がってくるというところには、様々な前提が必要で、それが本当に今後満たされていくかどうかという点については、不確実性が高いという
  • 従って、ならしてみると2%に近い数字が続いているが、もう少し辛抱して粘り強く金融緩和を続けたいというのが正直な気持ち
  • そのうえで、昨年度までの決定会合での議論の雰囲気を、これまでの議事要旨とか、あるいは今日、委員方から伺った話から類推すると、だいぶ前にみていたよりは持続的・安定的な2%の物価達成の希望はそこそこ持てるような、見通せるようになっているという状態ではないですけれども、ある程度可能性は出てきているということも、複数の委員が話していたように思う

5.多角的なレビューについて

  • レビューの実施方法は、内部のスタッフによる分析に加え、外部の有識者を招いた小さな研究会、外部の学者等に対する個別ヒアリング、更には金融経済懇談会の場の利用や、支店・事務所のネットワークを更に幅広く利用して、いろいろな方々との意見交換を行うということも含めたいと思っている
  • 特定の政策のということではなく、この間に行った様々な政策の効果・副作用、これをなるべく幅広く点検していくというのが目的
  • 目先の政策変更に結びつけて何かやるということではないので絶対必要というわけではないが、安定的な2%の可能性も出てはきているという中で、うまくいったとき、あるいはうまくいかなかったとき、そういうところをにらんで用意をしておこうというタイミングだと思った
  • レビューを実施している1年から1年半の間、政策変更がないということはなく、必要があれば実行していく
  • レビューの結果の発表のタイミングについては、最後には何かまとめたものを出したいと思うが、途中でも少しずつまとまったものができて、それを外に問うことが有益であると考えられる場合には、 随時発表していきたい

[ゴールデン・チャート社]


■関連リンク

FED&日銀ウォッチ

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

総裁記者会見要旨(2023年4月27、28日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)