【2023年3月9日~10日】総裁定例記者会見(要約) 2023年03月13日 15時05分
総裁記者会見要約(2023年1月13日)
1. 今回の決定内容について
- 長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールのもとでの金融市場調節方針について、長短金利操作の運用も含め、現状維持とすることを全員一致で決定
- 資産買入れ方針に関しても、現状維持とすることを全員一致で決定
2. 経済・物価動向について
- わが国の景気の現状については、「資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している」と判断(前回判断と変わらず)
- 先行きは、「資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していく」とみており、その後は、「所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続ける」と考えている
- 物価面は、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、4%程度となっていて、予想物価上昇率は上昇している。先行きについては、、来年度、2023年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想していて、その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみている。
3.異次元金融緩和を続けた10年間について
- 大規模な金融緩和は政府の様々な政策とも相まって、経済・物価の押し上げ効果をしっかりと発揮してきていて、わが国は、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっている
- また、経済の改善は労働需給のタイト化をもたらし、女性や高齢者を中心に400万人を超える雇用の増加がみられ、若年層の雇用環境も大幅に改善した
- ベアが復活し、雇用者報酬も増加した
- 長きにわたるデフレの経験から、賃金や物価が上がらないことを前提とした考え方や慣行、いわばノルムが根強く残っていることが影響して、2%の物価安定の目標の持続的・安定的な実現までは至らなかった点は残念
- ただ、ここにきて、女性や高齢者の労働参加率が相応に高くなり、追加的な労働供給が徐々に難しくなる中で、労働需給の面では賃金が上がりやすい状況になりつつある
- 今後も政府とも連携しながら、金融緩和を継続することで、時間がかかるとしても、賃金の上昇を伴うかたちで物価安定の目標を持続的・安定的に実現することは可能であるというふうに考えている
4.新体制への期待について
- 新総裁は昔から個人的にもよく知っており、わが国を代表する経済学者であり、また以前の審議委員としての経験も含め、中央銀行の実務にも精通している
- 組織をまとめ、日本銀行の使命である物価の安定と金融システムの安定に向けて、手腕を発揮してもらえるものと期待をしている
- 副総裁の氷見野、内田両氏も、これまで財務省や日本銀行で一緒に働いてきた縁があり、よく知っている。新総裁を補佐して組織をまとめ、日本銀行の使命達成のために頑張ってほしい
5.この10年の金融緩和の評価について
- その前の15年のデフレ期とはまさに様変わりの経済の活性化、そしてデフレでない状況になり、雇用も400万人以上増加し、ベアも復活し、雇用は大きく増加した。そういった意味で、日本経済の潜在的な力が十分発揮されたと、金融緩和というのは成功だったというふうに思う
- もちろん長期的な潜在成長率を決定するものは、経済学の教える通り、生産年齢人口の増加と、いわゆる技術進歩率であり、そういうものは、直接的に金融政策で影響されるというよりも、もっと構造的な問題であるとは思う
- 長期的な潜在成長率を押し上げるということができたかと言われると、それは難しかったと思うけれども、そのもとでも、デフレを解消して経済を活性化させて、雇用を400万人以上つくり出して、就職氷河期と言われたようなものを完全に解消したということは、やはり金融政策の効果であったというふうに思っている
- 2%の物価安定の目標というのは、グローバルスタンダードになっていて、今や先進国のほとんど全てが、2%の物価安定目標というものを掲げて、金融政策を運営しているということで、これ自体は適切であると思いますし、問題だと思っていない
- いわゆる副作用と言われるものについても、様々な対応を取ってきているし、その副作用の面よりも、金融緩和の経済に対するプラスの効果がはるかに大きかったというふうに思っている
6.メディアや世の中との関係について
- コミュニケーションは簡単ではないと思うが、一番重要なことは、実際にその政策運営をする際に、何を目標にして、どのようにしようとしているかということを、やっぱり明確にはっきりと伝えるということに尽きると思う
- その点、私としては、個人的には努力してきたつもりですけれども、必ずしも完全に市場とコミュニケートできたというつもりはない
[ゴールデン・チャート社]
■関連リンク
■参考資料(外部サイト)
総裁記者会見要旨(2023年3月9、10日開催分)(日本銀行)