【2023年1月17日~18日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2023年01月26日 11時56分

金融政策決定会合における主な意見(2023年1月26日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国経済は、持ち直している。先行きは、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。
  • 国内経済は、全体として底堅く推移している。先行き、個人消費はペントアップ需要が緩やかに発現するほか、インバウンド需要も増加していくと考えられる。
  • わが国経済は持ち直しの動きが続くとみられる。ただし、海外経済の動向等についての不確実性が高いもと、持ち直しのペースは鈍化する可能性がある。
  • 引き続き、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向、内外の感染症の動向やその影響など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い。
  • 企業では、価格転嫁とともに賃上げにも前向きな姿勢がみられている。このことは、企業業績の底上げを通じた経済と物価の前向きな循環につながる可能性がある。
  • 持続的な賃金上昇の実現には、仕事に応じた賃金カーブへの変革が必要であり、春の労使交渉では、給与・人事制度改革への取り組みにも注目している。

(2)物価

  • 消費者物価は、目先、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から高めの伸びとなったあと、そうした影響の減衰に加え、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果もあって、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。
  • 消費者物価は、原油価格の下落や政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果から、いったん上昇率が低下すると考えられる。その後は、賃金上昇率の高まりや企業の価格転嫁の動きが続くもと、再び上昇率が高まるとみられる。
  • 輸入物価の前年比プラス幅は明確に縮小しており、物価上昇の起点であるコスト・プッシュ圧力は減衰し始めている。
  • 来年度以降、消費者物価のプラス幅は2%を下回るとみており、現時点では、「物価安定の目標」の実現には、なお距離がある。
  • 消費者物価上昇率は、コスト・プッシュ圧力の一巡後に2%を下回るとみている。2%の「物価安定の目標」を達成するためには、その後、名目賃金の上昇を受けてサービス価格を中心とする基調的物価が十分に上昇することが必要である。
  • 賃上げの気運は高まっており、大企業を中心に相応のベアが実現する可能性があるが、中には賃上げに慎重な声もある。賃金の持続的な上昇には時間がかかるので、マクロ経済政策の支えが必要である。
  • 2%の「物価安定の目標」の実現には、ディマンド・プル型の物価上昇への変化が必要であり、一般サービスの物価上昇率を注視している。
  • 国内経済が底堅く推移するもとで、既往の原材料価格上昇がタイムラグを伴って転嫁されるため、消費者物価への上昇圧力はなお残ると考えられる。企業による地政学的リスクを考慮したサプライチェーン再構築の動きも物価の上昇圧力となり得る。
  • 企業の価格転嫁の動きは現在進行形であり、物価上昇モメンタムは続いている。短観の1年後の販売価格の見通しが物価全般の見通しを上回っていることは、企業の価格設定行動の積極化を示している。
  • 財だけではなく、サービスの価格も、上昇ペースを高めてきている。
  • 昨年来の海外発の大幅な価格ショックが、物価に対するノルムを変化させる可能性がある。
  • 価格転嫁の進捗は、企業収益の改善や、賃上げと投資の積極化につながっており、それが従業員のエンゲージメントの向上やイノベーション創出を通じて、さらなる収益改善・賃上げをもたらす、という形で好循環が回り始めつつある。

2.金融政策運営に関する意見

  • 経済・物価情勢を踏まえると、イールドカーブ・コントロールの運用も含め、現在の金融緩和を継続することが適当である。
  • 物価見通しを踏まえると、現在は、金融緩和の継続により経済をしっかりと支え、企業が賃上げしやすい環境を実現することが重要である。
  • 2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成には時間を要するという物価見通しを踏まえると、現行のイールドカーブ・コントロールを継続していくことが必要であり、その点について丁寧な説明を行うとともに、適切な金融調節を継続することが重要である。
  • 「物価安定の目標」の達成には経済と物価の前向きな循環が不可欠であり、その背後にあるメカニズムや持続性を見極めるとともに、対外的に分かりやすく説明する必要がある。
  • 持続的な賃金上昇が見込めるまで、企業の変革努力を後押しするため、債券市場の機能度にも留意しつつ、イールドカーブ全体を抑制することが必要である。
  • 前回会合で決定したイールドカーブ・コントロールの運用見直しは、あくまでも金融市場の機能改善を通じて金融緩和をより持続可能とするための措置である。
  • 前回会合で決定したイールドカーブ・コントロールの運用の見直しが市場機能に及ぼす効果については、いましばらく時間をかけて見極める必要がある。
  • 市場が落ち着き、市場機能が回復するにはやや時間がかかる可能性がある。金融緩和の継続が必要であること、日本銀行の緩和姿勢は変わらないこと、また、賃金の上昇はこれからなので、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成には時間がかかることを丁寧に説明していくべきである。
  • 金融環境の評価にあたっては、イールドカーブ・コントロールの運用見直しが調達コスト等に及ぼす影響について、引き続き見極めていく必要があるが、現時点では、貸出における変動金利型・固定金利型の割合など、調達構造を含めた全体像を踏まえると、全体として緩和した状態を維持していると評価できる。
  • 長期金利には上昇圧力が生じ、イールドカーブ上の歪みが解消していない中、国債買入れの増額や共通担保資金供給オペの拡充等により、イールドカーブ全体にわたって金利上昇を抑制すべきである。
  • 共通担保資金供給オペの拡充は、現在の大規模な国債買入れに加え、安定的なイールドカーブの形成に役立つ仕組みである。
  • 共通担保資金供給オペも活用しながら、機動的な市場調節運営を続けることで、市場機能が改善していくことを期待している。
  • 市場機能の改善にも配意しつつ、適切なオペ運営に努めるとともに、イールドカーブの形状、流動性など市場機能の状況、社債市場の状況などを謙虚かつ丁寧にフォローしていくことが重要である。
  • 前回会合では長期金利の変動幅の拡大と併せて国債買入れの増額を決定して金融緩和姿勢を維持したことについて、引き続き情報発信していくべきである。
  • 低金利の長期継続を前提とした資金運用・調達が続いてきただけに、将来の出口局面では、金利上昇に伴うリスクの所在や市場参加者の備えの確認が必要になると考えられる。
  • いずれかのタイミングでは検証を行い、効果と副作用のバランスを判断することが必要であるが、現時点では、金融緩和の継続が適当である。

3.政府の意見

(1)財務省

  • 令和5年度予算について、通常国会への提出に向けて作業を進めているが、防衛力の抜本強化やこども政策、GXの推進など、わが国が直面する内外の重要課題の解決に道筋をつけ、未来を切り開くための予算としている。
  • 経済・財政運営に万全を期すべく、本予算の一日も早い成立に向けて取り組む。
  • 日本銀行には、政府との連携の下、経済・物価・金融情勢を踏まえ、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切に金融政策運営が行われることを期待する。

(2)内閣府

  • 政府としては、景気の下振れリスクにも十分対応し、日本経済を民需主導の持続可能な成長経路に乗せていくため、総合経済対策および令和4年度第2次補正予算を迅速かつ着実に実行する。
  • 日本銀行には、引き続き、政府と緊密に連携し、経済・物価・金融情勢を十分踏まえ、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を期待する。

[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2023年1月17、18日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)