【2023年1月17日~18日】総裁定例記者会見(要約) 2023年01月20日 16時50分

総裁記者会見要約(2023年1月18日)

1. 今回の決定内容について

  • 長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールのもとでの金融市場調節方針について、長短金利操作の運用も含め、現状維持とすることを全員一致で決定
  • 資産買入れ方針に関しても、現状維持とすることを全員一致で決定
  • 貸出増加を支援するための資金供給の貸付実行期限を1年間延長すること、気候変動対応オペの対象先を拡大し、新たに系統会員金融機関を含めること、共通担保資金供給オペを拡充することも決定

2. 経済・物価の現状と先行きについて

  • わが国の景気の現状については、「資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している」と判断(前回判断から変化なし)
  • 海外経済は、回復ペースが鈍化している(前回判断から変化なし)
  • 輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響が和らぐもとで、基調として増加している(前回判断から変化なし)
  • 企業収益は全体として高水準で推移していて、業況感は横ばいとなっている(前回判断から変化なし)
  • 設備投資は緩やかに増加している(前回判断から変化なし)
  • 雇用・所得環境は、全体として緩やかに改善している(前回判断から変化なし)
  • 個人消費は、感染症の影響を受けつつも、緩やかに増加している(前回判断から変化なし)
  • 金融環境については、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているが、全体として緩和した状態にある(前回判断から変化なし)
  • 先行きのわが国経済の展望は、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していき、その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えている
  • 物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、3%台後半となっている。予想物価上昇率は上昇している。物価の先行きについては、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、目先、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、高めの伸びとなったあと、そうした影響の減衰に加え、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果もあって、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想している。その後、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果の反動もあって、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみている。
  • 前回の見通しと比べて、成長率については、2022年度と2023年度は、政府の経済対策が押し上げ方向に寄与するものの、海外経済の下振れなどからいくぶん下振れ、2024年度は経済対策の効果の反動によりいくぶん下振れている。物価については、2022年度と2023年度は、経済対策がエネルギー価格を押し下げる一方、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響などもあって概ね不変、2024年度は、経済対策による押し下げの反動からいくぶん上振れている。
  • リスク要因は、引き続き、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向、内外の感染症の動向やその影響など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高いと考えている。リスクバランスは、経済見通しについては、2022年度と2023年度は下振れリスクの方が大きいですが、2024年度は概ね上下にバランスしているとみている。物価見通しについては上振れリスクの方が大きいとみている。

3.物価の見通しの引き上げについて

  • 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、足元では3%台後半となっているが、来年度半ばにかけて2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと予想している。消費者物価の基調的な上昇率は、物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくと考えているが、それにはなお時間がかかるとみており、物価安定の目標を持続的・安定的に達成できる状況が見通せるようになったとは考えていない。

4.イールドカーブ・コントロールがうまく機能していないように見受けられる点について

  • 日本銀行は10年物国債金利について、0.5%の利回りでの指値オペを毎営業日実施しており、経済合理性の観点からは、0.5%を超える利回りでの取引が継続的に行われることはないと考えられる
  • 金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが実現するよう、今回拡充した共通担保資金供給オペも活用しながら、機動的な市場調節運営を行っていく方針であり、長期金利の変動幅を更に拡大する必要があるとは考えていない

5.前回、長期金利の変動幅を拡大した効果について

  • 日本銀行は前回の金融政策決定会合において、長期金利の変動幅の拡大と同時に、国債買入れ額の大幅な増加や、必要に応じて各年限において買入れ額の更なる増額や指値オペを機動的に実施することなどを決定した。
  • 加えて、今回の会合では共通担保オペの拡充も行ったが、運用の見直しからさほど時間が経っていないので、これらの措置が市場機能に及ぼす影響を評価するには、なお時間を要すると思うが、機動的な市場調節運営を続けることで、今後、市場機能は改善していくとみている

[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

FED&日銀ウォッチ

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

総裁記者会見要旨(2023年1月17、18日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)