【2022年12月19日~20日】総裁定例記者会見(要約) 2022年12月21日 17時24分
総裁記者会見要約(2022年12月20日)
1. 今回の決定内容について
- 長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールのもとでの金融市場調節方針について、現状維持とすることを全員一致で決定
- そのうえで、債券市場の現状を鑑み、イールドカーブ・コントロールの運用について、以下の通り一部見直すことを決定
- 国債買入れ額を大幅に増やしつつ、長期金利の変動幅を、従来の±0.25%程度から±0.5%程度に拡大
- 10年物国債金利について、0.5%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日実施
- 各年限において、機動的に、買入れ額の更なる増額や指値オペを実施
- 社債買入れについては、買入れ残高を調整する際、社債の発行環境に十分配慮して進めることとする
2. 経済・物価動向について
- わが国の景気の現状については、「資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している」と判断(前回判断から変化なし)
- 海外経済は、回復ペースが鈍化している
- 輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響が和らぐもとで、基調として増加している
- 企業収益は全体として高水準で推移していて、業況感は横ばいとなっている
- 設備投資は緩やかに増加している
- 雇用・所得環境は、全体として緩やかに改善している
- 個人消費は、感染症の影響を受けつつも、緩やかに増加している
- 金融環境については、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているが、全体として緩和した状態にある
- 先行きのわが国経済の展望は、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していく
- 物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、3%台半ばとなっていて、予想物価上昇率は上昇している。先行きについては、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めた後、これらの押し上げ寄与の減衰に伴い、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想している。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみている。
- リスク要因は、引き続き、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向、内外の感染症の動向やその影響など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高いと考えている
3.大規模な金融緩和の効果と副作用について
- 失業率の低下など雇用情勢は改善し、デフレでない状況となった
- 大規模な金融緩和が行われなかった場合と比べて、この間の実質GDPは平均+0.9~1.3%程度、消費者物価の前年比は同じく+0.6~0.7%程度押し上げられていたとの試算結果を得ている
- 一方、長期にわたる金融緩和の副作用としては、主に金融機関収益を圧迫し、金融仲介機能に悪影響を与える可能性や、市場機能の低下が挙げられる
4.イールドカーブ・コントロールの運用見直しは事実上の利上げではないか
- 今回の措置は、市場機能を改善することで、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が、企業金融等を通じてより円滑に波及していくようにする趣旨で行うもので、利上げではない
- 今回の措置により、国債金利の変動幅が広がるものの、企業金融等を通じてイールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が、より円滑に波及していくというふうに考えている
- 出口政策とか出口戦略の一歩とか、そういうものでは全くない
5.イールドカーブ・コントロールの運用見直しが景気に与える影響について
- 短期の政策金利を-0.1%、10年物国債の金利目標をゼロ%程度というYCCの基本は全く変わっておらず、そういう意味で、経済に対する刺激効果というか、経済成長を促進し、経済の拡大を図っていくという効果に基本的な変更はない
- こうしたYCCの運用の一部の手直しによって、企業金融への波及がよりスムーズに安定的に起こるということで、景気にはむしろプラスではないかというふうに思われる
- イールドカーブの歪み、その10年のところを是正することが何かイールドカーブ・コントロール全体の効果を削ぐとかいうことは全くないというふうに考えている
6.更に長期金利に上昇圧力がかかる場合の措置について
- 足元、物価上昇率は輸入物価の上昇を反映して上昇しているが、来年度に入ると、それが減衰して、次第に物価上昇率は低下していくということで、2023年度全体でみると2%にいかないという可能性が高い。そうしたもとでYCCないし現在の量的・質的金融緩和を見直すとか、そういうことは当面考えられない。
7.いったん上限金利を上げてしまうと、また市場が催促するのではないか
- そういう可能性がないとは言えない
- 他方で、それはあくまでも、いわば内外の物価とか金融資本市場の動向によるものであって、欧米の物価上昇率は、米国の場合は明確にピークアウトしているし、欧州の場合も、それぞれの政府や中央銀行の見通しでは、来年において物価上昇率が下がっていくという見通しになっていて、これまでのような調子でどんどんすごい勢いで金利が上がっていくとか、そういうことはちょっと考えにくい
- いずれにせよ、市場が何か催促するということはいつでもあるが、そういう客観的な情勢があるかと言われると、そういう情勢はあまり考えられないと思っている
[ゴールデン・チャート社]
■関連リンク
■参考資料(外部サイト)
総裁記者会見要旨(2022年12月19、20日開催分)(日本銀行)