【2022年10月27日~28日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2022年11月08日 17時33分

金融政策決定会合における主な意見(2022年11月8日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国経済は、持ち直している。先行きは、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。
  • わが国経済は、感染症抑制と経済活動の両立が進む中で持ち直しており、需給ギャップ解消や賃金引き上げモメンタム強化により賃金水準の上昇幅拡大など好循環が期待される。
  • 先行きは海外経済の減速が見込まれることなどから、わが国経済は、来年度は回復のペースが鈍化すると考えられる。
  • 欧米経済は、インフレ対策を優先するもと景気の減速感が強まっている。特に、欧州では、資源価格高騰の影響が強く出ており、景気後退が懸念される。
  • 欧米が歴史的なペースで金融引締めを続ける中、想定を上回る海外経済の減速や、実質金利の急上昇に伴う資産価格やクレジット市場の急変などのリスクに注意を要する。
  • 経済成長が家計の可処分所得の増加につながるよう、生涯を見据えた長期・安定的な資産形成を推進することが重要である。

(2)物価

  • 欧米でのインフレ圧力が継続しているほか、既往の原材料価格上昇の影響からわが国の企業物価は高水準で推移している。今後しばらくは、価格転嫁が進む中で、消費者物価は上昇を続けると考えられる。
  • サービス価格やエネルギー以外の公共料金にも上昇の兆しが見られ、比較的高めの物価上昇率が続く公算が大きい。
  • 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は3%程度となっている。予想物価上昇率は上昇している。先行きの消費者物価は、本年末にかけて上昇率を高めたあと、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。
  • 消費者物価上昇率は3%となっているが、最近の消費者物価の上振れは輸入財価格上昇を起点とする販売価格への転嫁の影響によるものである。こうした傾向は当面続くとみられるが、来年度にはこうした要因が一巡し、2%を下回るとみている。
  • 来年度以降、消費者物価の前年比は、世界経済の減速の影響なども踏まえると、プラス幅を縮小し、2%を下回る可能性が高いとみられる。
  • 来年度後半以降は、需給ギャップの改善や予想物価上昇率、賃金上昇率も高まっていくもとで、物価の基調が強まっていく姿を想定している。こうした見通しの鍵となるのが春季労使交渉における賃金の動向である。
  • コスト・プッシュとはいえ、実際に川上から川下へ価格転嫁が拡がる中、物価が上がらないことを前提とした企業の行動原理が変わりつつある可能性がある。
  • ディスインフレの世界が長年続いた後の物価上昇局面であり、また、グローバル化の逆回転等の構造的変化もあるため、過去の経験がそのまま当てはまらず、物価が大きく上振れするリスクも否定できない。

2.金融政策運営に関する意見

  • わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にある。企業の資金繰りの改善傾向は続いているほか、外部資金の調達環境も総じてみれば良好である。そのうえで、金融市場調節方針、資産買入れ方針、先行きの政策運営方針は、現在の方針を維持することが適当である。
  • 当面、感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるべきである。政策金利のフォワードガイダンスも、前回会合で決定した方針を維持することが適当である。
  • 「物価安定の目標」が実現するうえでは、賃金が持続的・安定的に上昇することが重要である。また、賃金が上昇するためには、企業の成長期待が高まることが重要と考えられる。
  • 賃金上昇の実現可能性を高めつつ、「物価安定の目標」を実現するため、現在の金融緩和を継続することが適当である。
  • 企業業績が全体として高水準で推移していること、賃金上昇の動きがみられていることを踏まえると、わが国経済には好循環の兆しが出てきており、当面の金融政策運営に関しては、現状維持が適当である。
  • 今年度は物価上昇に拡がりがみられ、上振れる可能性もあるが、今後の持続性にはまだ確信が持てない。現在の企業の価格設定行動や賃上げの動きが定着し、物価と賃金の好循環が起きれば、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成が視野に入ってくる。
  • 「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成するうえで、中途半端な政策の変更は、物価と賃金の好循環を妨げるリスクがあり、望ましくない。
  • 金融緩和を粘り強く続けるもとで中長期の予想物価上昇率は緩やかに上昇しており、実質金利の低下を通じて、わが国経済への一段の緩和効果が顕現化する兆しが生じている。
  • 2%の「物価安定の目標」を安定的に達成するうえでは、名目賃金の上昇が必要不可欠である。金融緩和は、労働需給の引き締まりのほか、物価上昇によるインフレ予想の高まりという経路を通じて、名目賃金の上昇に作用する。
  • 欧米では賃金と物価のスパイラル的な上昇が懸念される一方、わが国では賃金と物価の好循環は実現していない。こうした、内外の金融政策の方向性が異なる背景を丁寧に説明する必要がある。
  • 「人への投資」や事業ポートフォリオ改革など供給サイドの変革により、生産性や賃金水準を高め、所得から支出への好循環につなげるために、金融緩和継続が必要であり、これを分かりやすく情報発信する必要がある。
  • インフレ目標政策は物価見通しに基づくもので、一時的な物価よりも先行きの見通しを見ながら、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成を目指して運営している。このことを丁寧に説明する必要がある。
  • 金融システムは全体として安定性を維持している。ただし、グローバルな金融環境のタイト化の影響には警戒が怠れない。
  • 為替水準はファンダメンタルズに沿って決まるべきものである。こうした考え方に即して市場と対話することは、金融政策運営への理解を得るうえでも重要である。
  • 債券市場の安定性確保は重要であり、引き続き、モニタリング等を通じて市場の状況をきめ細かく把握する必要がある。
  • 金融政策を直ちに変更する必要はないが、副作用に目を配るとともに、物価高が家計の行動や賃金にどのような影響を与えるのか、謙虚に予断なく検証していく必要がある。
  • 将来の出口戦略が市場にどのような影響を与えるのか、市場参加者の備えが十分なのか、確認を続けることも重要である。

3.政府の意見

(1)財務省

  • 足下の物価高には、切れ目のない対応を講じることが重要である。先月の追加策に続き、総合経済対策を策定する予定であり、電気やガスなどの負担軽減策などを通じ、急激な価格高騰から国民生活と事業活動を守っていく。
  • また、経済対策の裏付けとなる第2次補正予算を速やかに編成し、早期成立に全力を挙げて取り組んでいく。
  • 日本銀行には、政府と連携し、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた金融政策運営を期待する。

(2)内閣府

  • 政府としては、「物価高・円安への対応」、「構造的な賃上げ」、「成長のための投資と改革」を重点分野とし、世界経済の減速リスクを十分視野に入れつつ、経済情勢の変化に切れ目なく対応し、「新しい資本主義」を前に進めるための総合経済対策を策定する。
  • 日本銀行には、引き続き、政府と緊密に連携し、経済・物価・金融情勢を十分踏まえ、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2022年10月27、28日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)