【2022年9月21日~22日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2022年10月03日 09時37分
金融政策決定会合における主な意見(2022年10月3日)
1.金融経済情勢に関する意見
(1)経済情勢
- わが国経済は、資源価格上昇の影響などを受けつつも、感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している。先行きは、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。
- わが国経済は、輸出・生産が増加に転じているほか、個人消費は感染症の影響を受けつつも緩やかに増加しており、景気は持ち直している。
- 国内では7月から感染者数が再び増加に転じたものの、高頻度データ等から確認すると、個人消費は底堅く推移しているとみられる。企業による設備投資についても、感染症や供給制約の影響から先延ばしされていたものを含め、持ち直しの動きが続いている。
- 為替円安は、短期的には輸入製品や食料品等の値上げにつながる一方で、中長期的には国内の経済活動を上押しする効果もある。この点で、コスト増加という負の影響のみのエネルギー価格の上昇とは異なる。
- 円安のメリット拡大には、インバウンド消費の拡大や成長投資の国内拠点選択、中小企業の輸出力強化が重要である。
- 感染症は、その動向によっては国内の消費を下押しし得るほか、ゼロコロナ政策を続ける中国の感染症の動向も、外需・供給制約の両方の経路から、経済の下押し要因となり得る。こうしたことから、感染症は引き続き大きなリスク要因である。
- 一部業界では感染症の影響が残っているものの、全体としてみれば、コロナ後を見据えた対応や新たなビジネスへの取り組みが重要になっている。
- 日本経済は、好循環の流れが動き始めた段階である。一方で、米欧中の主要経済圏が減速する中、今後、世界的な景気後退が到来し、外需が下押しされるリスクは相応にある。
- 欧米が急速な金融引締めを続ける中、想定を上回る海外経済の減速や、資産価格やクレジット市場の急変などのリスクに注意を要する。
(2)物価
- 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、2%台後半となっている。先行きは、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、これらの押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。
- 既往の原材料価格上昇を背景に、企業からは値上げの予定公表が相次いでおり、引き続き、幅広い品目で価格上昇が続くと予想される。
- 消費者物価は、目先は上昇率が高まるとみられるが、現時点では賃金上昇の持続性は確認できておらず、「物価安定の目標」の安定的な実現にはなお課題がある。
- わが国の予想物価上昇率が長期のデフレにより低位安定したことは、「物価安定の目標」達成の制約となっている一方で、今次局面では、欧米に比べて物価上昇率が抑制されている要因にもなっている。
- 消費者物価が大きく上振れするリスクについても、為替相場の影響を含め、予断なく謙虚にみていく必要がある。
- 既存の各種コア指標は、輸入物価に大きく影響されており、その解釈は一層難しくなっている。改めて、物価の形成メカニズムの基本、とりわけ賃金の動向を注視していく必要がある。
- 持続的な「物価安定の目標」の実現には、賃金の上昇が重要である。足もとの人手不足などを踏まえれば、高い賃上げが実現される可能性もある。
- わが国は、2%の「物価安定の目標」と整合的な賃金上昇に向けて労働需給の引き締まりが必要な状況であり、労働需給が既に逼迫して賃金と物価のスパイラル的な上昇が懸念される米英とは経済状況が異なる。
2.金融政策運営に関する意見
- わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にある。感染症の影響は、中小企業等の一部になお残存しているが、これらの中小企業等の資金繰りも改善方向にある。
- コロナオペのような急性の危機への対応は段階的に役割を後退させつつ、幅広い資金繰りニーズへの対応に軸足を移すことで、企業等にとって緩和的な金融環境を引き続きしっかりと維持していくことが適切である。
- コロナオペの利用額は減少しているほか、地域金融機関の経営基盤も強化されている。ただし、一部に厳しさが残っているので、コロナオペは段階的終了が良いと考える。
- 緊急対応としてのコロナオペは役割を終えつつあるが、感染症の収束は道半ばであり、段階的に終了するのが望ましい。一方、企業では原材料価格高騰等による新たな資金需要が生じており、これに対応するために資金供給手段の利用可能性を高めることが適当である。
- コロナオペは段階的に終了していくが、感染症の状況に応じて機動的に企業の資金繰りを支援する姿勢や、金融緩和を継続する方針に変化はない。
- 物価の上振れリスクは相応にあるが、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成には距離がある。マイナスの需給ギャップが存在し、失業率、有効求人倍率も感染症以前には戻っておらず、エネルギーや原材料価格の高騰によって海外へ所得流出が起きている現状では、金融緩和を維持すべきである。
- 消費者物価上昇率は2%台後半となっているが、サービス価格など物価の基調を規定する部分が上昇し、消費者物価上昇率が安定的に2%を超えることが視野に入ってくるまでは、現状の金融緩和を継続することが適当である。
- 賃金上昇率が低く、広範かつ大幅な物価上昇には至っていない。低成長・低インフレ・低賃金上昇に陥った日本が2%の「物価安定の目標」を達成するには、経済・賃金構造の変革による生産性向上を後押しし、物価と所得の好循環につなげるため、金融緩和継続が必要である。
- 「賃金と物価の好循環」につなげることができるか注視すべき局面にあり、現在の金融政策運営方針を直ちに変更する必要はない。
- 金融政策運営にあたっては、為替相場は直接コントロールする対象ではない。「物価安定の目標」を安定的に実現するため、金融緩和を継続する必要があることを丁寧に説明していくべきである。
- 為替円安が一段と進んでいる背景には、内外の金融政策の方向性の違い等も指摘される。円安の影響は経済主体により異なるため、現行の金融緩和を続ける意義を丁寧に説明する必要がある。
- 海外経済の減速など、他のリスクも当然政策判断に影響するが、感染症は引き続き大きなリスクであり、現在のフォワードガイダンスの表現を変更する必要はない。
- 感染症の帰趨がまだ不確実であり、また、来年度以降、物価はプラス幅を縮小していく可能性が高いことから、現行のフォワードガイダンスにある緩和バイアスは維持することが望ましい。
- 債券市場の機能度低下を心配する声がある。引き続き市場の状況を確認・検証するとともに、今後、適切なタイミングが来た際には、出口戦略についても、市場と適切なコミュニケーションをとっていくことが、金融市場の安定性確保の観点から重要である。
3.政府の意見
(1)財務省
- 議論のあったコロナオペ等に関する対応は、日本銀行が今後も企業金融の円滑確保に万全を期する姿勢を示すものと受け止めている。
- 来年度予算の編成作業が始まっている。歳出改革を進めつつ、経済再生と財政健全化の両立を図る。
- 予備費を措置し、物価高騰への追加策を講じた。今後、総合経済対策を10月中に取りまとめるべく検討を進める。
(2)内閣府
- 政府としては、今月9日に取りまとめた、物価高に対する追加策を速やかに実施する。
- そのうえで、物価高騰など経済情勢の変化に切れ目なく対応しつつ、新しい資本主義を前に進め、国民の安心・安全を確保するための総合経済対策を、10月中に取りまとめる。
- 日本銀行には、引き続き、政府と緊密に連携し、経済・物価・金融情勢を十分踏まえ、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。
[ゴールデン・チャート社]
■関連リンク
経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら
■参考資料(外部サイト)
金融政策決定会合における主な意見(2022年9月21、22日開催分)(日本銀行)