【2022年7月20日~21日】総裁定例記者会見(要約) 2022年07月23日 15時26分
総裁記者会見要約(2022年7月22日)
1. 今回の決定内容について
- 長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コン トロールのもとでの金融市場調節方針について、指値オペの運用も含め、現状維持を決定
- 長期国債以外の資産の買入れ方針に関しても、現状維持とすることを全員一致で決定
2. 展望レポートについて
- わが国の景気の現状については、「資源価格上昇の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐもとで、持ち直している」と 判断
- わが国経済の先行きは、見通し期間の中盤にかけては、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみている。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えている。
- 物価の現状は、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、 エネルギーや食料品の価格上昇を主因に、2%程度となっている。また、予想物価上昇率は上昇している。
- 物価の先行きについては、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想している。この間、変動の大きいエネルギーを除いた消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、プラス幅を緩やかに拡大していくとみている。
- 前回の見通しと比べると、成長率については、2022年度が、海外経済の減速や供給制約の強まりの影響などから下振れているが、その後は、反動もあっていくぶん上振れている。物価については、輸入物価の上昇やその価格転嫁の影響から、足元を中心に上振れている。
3.日銀が目指す2%の「物価安定の目標」に達していないのは何がネックなのか。日本経済の成長に向けて、日銀の金融緩和がどのように役割を発揮していくか。
- その主な理由としては、わが国では、長きにわたるデフレの経験によって定着した、物価や賃金が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く、その転換に時間を要していることが挙げられる
- とはいえ、この間の大規模な金融緩和は、経済・物価の押し上げ効果をしっかりと発揮している
- 引き続き金融緩和を実施していくことで、時間はかかるかもしれないが、賃金の上昇を伴うかたちで、「物価安定の目標」を実現することは可能であると考えている
- 人口減少社会において、成長率を高めていくために重要なことは、何といっても企業による人的資本に対する投資、あるいは生産性を高めるための投資を実施していくことであり、この点、緩和的な金融環境を維持することは、金融面からそうした投資を支える効果を発揮してきたと思っている
4.急速な円安が日本経済にもたらす影響は
- 為替相場は、経済・金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移するということが最も重要だと考えており、最近のような急速な円安の進行は、先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど、経済にマイナスであり、望ましくない
- 日本にとって大事なことは、円安によって収益が改善した企業が、設備投資を増加させたり、賃金を引き上げたりすることによって、経済全体として所得から支出への前向きの循環が強まっていくということであるが、現在のように為替相場の動きが急速な場合には、企業がそうした前向きの動きを取ることを躊躇する面があり、そうした面からも急速な円安は望ましくない
5.物価の見通しについて
- 今回の展望レポートで、除く生鮮食品ベースの消費者物価の中心的な見通しは、2022年度は年度平均で+2.3%と上がっているが、年明け以降は、エネルギー価格の押し上げ寄与が減衰するなどし、この結果、来年度の消費者物価の上昇率は+1.4%まで減速するという見通しとなっている
- このように、今回の展望レポートでは、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現する見通しとはなっていないので、金融緩和を継続する必要がある
- 他方、企業の今後の販売価格の見通しは上昇しており、様々な予想物価上昇率も、短期がかなり上昇するだけでなく、中長期も緩やかに上昇しているので、価格転嫁の動きが少し広がってきていることは事実
[ゴールデン・チャート社]
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■参考資料(外部サイト)
総裁記者会見要旨(2022年7月20、21日開催分)(日本銀行)