【2022年7月20日~21日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2022年07月29日 11時21分

金融政策決定会合における主な意見(2022年7月29日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国の景気は、持ち直している。先行きは、資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環が強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。
  • わが国経済は、供給制約や輸入原材料価格の高騰などに下押しされているものの、個人消費を中心に持ち直している。
  • 個人消費は、旅行などイベント関連消費を中心に回復を続けるとみられるが、物価上昇の影響と行動様式の変容がみられるため、感染症による行動自粛下で蓄えた貯蓄の多くを直ちに取り崩すような消費行動は期待し難い。
  • 企業や家計の予想インフレ率は上昇しているほか、企業の堅調な設備投資計画の背景として期待成長率が上昇している可能性がある。これらを踏まえると、企業の将来の売上増加への期待が高まるもとで、賃金上昇が実現する可能性が高まっていると考えられる。
  • 市場では、世界経済のテーマとして、インフレだけでなくインフレ抑制に伴う景気後退も注目されている。各国中銀の金融引締めや、半導体不足の長期化が、世界経済の下押し要因である。
  • 欧米が金融引締めを行う中、米国が景気後退に陥ったり、国際金融市場に負のショックが生じたりすることで、日本経済に影響が及ぶリスクに注意する必要がある。
  • わが国経済の先行きを見通すうえでは、内外における感染症の帰趨やその影響、ウクライナ情勢や世界的インフレの影響など、不確実性が大きい状況が続いている。
  • わが国経済の先行きを巡っては、内外における感染症の再拡大、供給制約の長期化や主要国の金融引締めによる資産価格の下落など、下振れリスクが大きいと考えられる。
  • 中国では感染症が再び拡大している地域もあり、厳格な公衆衛生上の措置が断続的に導入されることで、世界経済が一段と下押しされるリスクが懸念される。

(2)物価

  • 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、2%程度となっている。予想物価上昇率は上昇している。先行きの消費者物価は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。
  • 輸入価格上昇に伴い、足もとの物価は上昇しているが、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると、「物価安定の目標」の安定的な達成は難しい。
  • 消費者物価については、コモディティ価格が当面高水準で推移すると想定されることから、これまで企業が値上げを控えてきたものを含めて、幅広い財・サービスの価格に徐々に反映されると考えられる。
  • 持続的な賃上げと付加価値向上が重要な経営課題となりつつあり、経済の回復が進むもとで、人的資本への投資や所得増加を目指す転職の活発化、スタートアップの成長が相俟って、賃金と物価の好循環が実現すると考えられる。
  • 最近、様々な企業による値上げの動きがみられており、値上げに対する企業の従来の意識に変化が生じている可能性がある。

2.金融政策運営に関する意見

  • 当面、感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるべきである。政策金利のフォワードガイダンスも、従来の方針を継続することが適当である。
  • 足もとの感染再拡大は極めて急速で、これが中小企業等の資金繰りに及ぼす影響を見極める必要があり、コロナオペの取り扱いについては、9月の決定会合で判断することが適当である。
  • コロナオペは、所期の効果を発揮し、役割を終えつつあるとみられるが、感染症が拡大する中で、今回会合での決定は見送るべきである。
  • わが国経済は、感染症からの回復過程にある中で、資源高による海外への所得流出という下押し圧力を受けている。こうした状況では、金融緩和によって賃金上昇を促していくことで、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を目指していくことが適当である。
  • 需給ギャップは2年以上マイナスであり、需要拡大と持続的な賃金上昇を後押しする現在の金融緩和を粘り強く継続すべきである。
  • 賃金上昇の実現可能性を高めつつ、「物価安定の目標」を実現するため、現在の金融緩和を継続することが適当である。
  • 2%の「物価安定の目標」は、持続的・安定的に達成すべきものであり、インフレ目標政策はインフレ見通しに基づく。このため、現実の物価上昇率だけでなく予想物価上昇率やそれらに基づく先行き見通しを見ながら政策を運営することが適切である。
  • 賃金上昇率に注目が集まる中では、政策運営に当たって、賃金動向を的確に把握する必要がある。
  • 「物価安定の目標」実現に必要な賃金の上昇を確認するにあたっては、全体の動きとともに、分布がどのように変化しているか等、統計などから多角的にみていくことが重要である。
  • サービス価格など物価の基調を規定する部分が上昇し、消費者物価上昇率が安定的に2%を超えることが視野に入っていないもとでは、現状の金融緩和を継続することが当然である。
  • 足もとの物価上昇は来年度には一旦落ち着くとみられ、その後、見通し期間の後半にかけては、経済が回復を続けるもとで、物価上昇率は1%を超えて推移することが展望される。こうした中、2%の「物価安定の目標」のもとで、現在の金融緩和を粘り強く継続していく必要がある。
  • 金融政策運営では、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢を強めることで、経済の回復と「物価安定の目標」の達成を早期に実現する必要がある。
  • 名目金利が低位で推移するもとでの最近の予想物価上昇率の高まりは、実質金利の低下を通じて金融緩和効果を強めており、これは、企業の設備投資スタンスの積極化等にも繋がっているとみられる。この間、金利上昇圧力を抑制するための最近の国債買入れの増加が、国債市場の機能度に与える影響を注視する必要がある。
  • 金融システムは全体として安定性を維持している。もっとも、将来どこかの時点で金融緩和の副作用が顕在化し、金融システムに影響するリスクについては、引き続き十分な注意を払っていく必要がある。
  • 金融緩和の効果については適切に情報発信する必要がある。大規模金融緩和は、雇用を増やし、労働時間を調整したベースでの実質賃金を引き上げてきたほか、非賃金面での待遇を改善し、一人当たり実質成長率を高めた。
  • 日本銀行が目指しているのは、賃金と物価の好循環であり、それが人々の暮らし向きの改善に繋がること、そして現段階ではそうした目的の実現までにはなお距離があり、金融緩和を継続して経済活動をサポートする必要があること、などの基本的な考え方を分かりやすく発信していくことが重要である。

3.政府の意見

(1)財務省

  • G20では、ロシアのウクライナ侵略が、食料・エネルギーの供給不安を招き、インフレを悪化させていることなどを議論した。
  • 政府としては、物価高に対して、補正予算で確保した予備費の活用をはじめ、物価・景気両面の状況に応じた対策に取り組む。
  • 日本銀行には、政府と連携し、ウクライナ情勢や感染症の影響も踏まえ、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向け、適切な金融政策運営を期待する。

(2)内閣府

  • 政府は、昨年の経済対策や、4月の総合緊急対策を着実に執行する。今後も、「物価・賃金・生活総合対策本部」において、予備費の機動的な活用など、迅速かつ総合的な対応に切れ目なく取り組む。
  • 物価上昇が続く中において、賃上げの流れが、よりしっかりとした、そして継続的なものとなるよう、総合的な取り組みを進める。
  • 日本銀行には、引き続き、政府と連携し、経済・物価・金融情勢を十分に踏まえ、適切な金融政策運営を期待する。

[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2022年7月20、21日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)