【2022年6月16日~17日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2022年06月27日 16時15分

金融政策決定会合における主な意見(2022年6月27日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  •  わが国の景気は、感染症や資源価格上昇の影響などから一部に弱めの動きもみられるが、基調としては持ち直している。先行きは、資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。
  • わが国の個人消費は、感染症の影響が和らぎ、人出が増加するもとで、サービス消費を中心に持ち直している。
  • わが国経済は、供給制約や輸入原材料価格の高騰などによる下押し圧力を受けているものの、旅行等サービス消費を中心に個人消費は改善しており、基調としては持ち直している。
  • わが国の経済は、感染者数の増減とともにサービス消費を中心に浮き沈みを繰り返してきたが、ウィズ・コロナが定着するもとで、感染者数の増加に対する景気の落ち込み度合いは小さくなってきている。
  • 個人消費は、回復基調にある。ホスピタリティ業界からは、国や自治体の支援策への期待とともに、夏に向けた予約は順調であると聞かれており、夏以降の持続性に注目している。
  • わが国経済は、感染症の影響が和らぐ中で個人消費は持ち直しているものの、対面型サービス業を中心に負の影響が長期化しないか懸念している。
  • 急激な円安の進行は、先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするため、経済にマイナスに作用する。
  • 輸出や生産は、中国でのロックダウンを受けた供給制約から、4月展望レポート時点の想定よりも下押し圧力が強まっている。また、そうした下押し圧力が長引く可能性が懸念される。
  • ロックダウン解除後も上海の経済活動の正常化には時間が必要であり、中国経済の成長鈍化や世界的な供給制約の長期化が懸念される。
  • わが国経済の先行きを見通すうえでは、中国を中心とした感染症の帰趨やその影響、ウクライナ情勢や世界的インフレの影響など、不確実性が大きい状況となっている。
  • 世界経済は回復基調にあるが、各国のインフレ動向と金融政策、中国のゼロコロナ政策、半導体不足等の供給制約という3つの不確実性がある。
  • 米国でハイペースでの利上げが進む中、同国の住宅市場やレバレッジド・ローンに変調が起きないか、動向を注視していく必要がある。

(2)物価

  • 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギーや食料品の価格上昇を主因に、2%程度となっている。当面、2%程度で推移するとみられるが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。
  • わが国でも、感染症の影響が和らぐもとで、経済活動が活発化し、物価の基調も徐々に高まっていくものとみている。
  • わが国の消費者物価の上昇率は、政府による激変緩和措置などにより抑制されている。
  • 足もとの物価上昇は、輸入価格上昇に伴う一時的なものであり、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると、「物価安定の目標」の安定的な達成は難しい。
  • 物価上昇による家計負担は、世帯所得や地域における支出ウエイトのばらつきによっても異なる点に留意が必要である。
  • 所得と物価が安定的かつ持続的に上昇する好循環の実現には、企業による生産性向上と賃上げへの取り組みとともに、所得増加を目指す転職の拡大に繋がる労働市場の変革と新たな価値を生み出すスタートアップの成長、家計による安定的な資産形成の推進が重要である。


2.金融政策運営に関する意見

  • わが国経済は、感染症からの回復途上にあるうえ、資源価格上昇による下押し圧力も受けている。また、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。きわめて不確実性が高い金融経済情勢を見極めながら、賃金の上昇を伴う形で、「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現できるよう、金融緩和を実施していく必要がある。
  • 資源価格上昇と為替変動により、値上げ品目は拡がりをみせているが、前向きの循環のもとでの「物価安定の目標」が実現されたとはいえず、金融政策は現状維持が適当である。
  • 需給ギャップのマイナスが2年以上続く中、需要を押し上げる持続的な賃金上昇を実現していくためには、現在の金融緩和を継続し、経済をしっかりと下支えすることが適当である。
  • 2%の「物価安定の目標」の達成にはそれを上回る賃金上昇が必要であるが、わが国経済は、負の需給ギャップがあるもとで、賃金上昇を加速させるような労働需給環境には至っておらず、その点で、金融緩和を縮小している欧米諸国の経済環境とは異なる。
  • 金融緩和の継続は、企業による持続的な賃上げを後押しするために有効であると考えられる。
  • 賃上げよりも雇用維持を優先する労使交渉が根付いてきたことで、わが国の賃金は構造的に上昇しにくくなっている。こうした中においても、賃金の上昇が実現していくよう、金融緩和を粘り強く継続することで経済を下支えしていく必要がある。
  • わが国の負の需給ギャップを解消し、所得と雇用を増加させるには、政府の財政政策等とも連携しながら、経済を温めて高圧経済の実現を目指すことが必要である。
  • 「物価安定の目標」を安定的に達成するためには、家計の購買力や予想インフレ率を引き上げる必要がある。
  • 物価の基調や予想インフレ等のデータをリアルタイムで点検しつつ、賃上げ傾向が確実になり、「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現するまで、金融緩和を継続すべきである。
  • 金融政策運営では、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢を強めることで、経済の回復と「物価安定の目標」の達成を早期に実現する必要がある。
  • 海外からの金利上昇圧力は今後も続くとみられる中、金融市場調節方針を実現するため、指値オペの毎営業日実施を続けることが適当である。
  • 当面、感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるべきである。政策金利のフォワードガイダンスも、従来の方針を継続することが適当である。

3.政府の意見

(1)財務省

  • 令和4年度補正予算が成立した。補正予算を含めた総合緊急対策により、感染症再拡大や物価高騰等による予期せぬ財政需要に迅速に対応し、国民の安心を確保する。
  • また、骨太方針2022が閣議決定された。夏以降の予算編成にあたり、本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する。
  • 日本銀行には、政府との連携のもと、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

(2)内閣府

  • 政府は、昨年の経済対策や、4月の総合緊急対策を迅速に執行する。「物価・賃金・生活総合対策本部」を立ち上げ、迅速かつ総合的な対策に取り組む。
  • 骨太方針2022、新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画を前に進めるための総合的な方策を早急に具体化し、経済社会をより強靱で持続可能なものに変革する。
  • 日本銀行には、引き続き、政府と連携し、経済・物価・金融情勢を十分に踏まえた、適切な金融政策運営を期待する。

[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2022年6月16、17日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)