【2022年3月17日~18日】金融政策決定会合の結果(要約) 2022年03月18日 17時42分

前回(2022年1月18日公表)との比較まとめ

1.金融市場調整方針

 前回会合から据え置きを決定。

【短期金利】日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用。

【長期金利】10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債を買入れ。

2.資産買入れ方針

 前回会合から据え置きを決定も、2022年4月以降のCP等、社債等の買入れについて追記。

【ETF】年間約12兆円の残高増加ペースを上限に必要に応じて買入れ。

【J-REIT】年間約1,800億円の残高増加ペースを上限に必要に応じて買入れ。

【CP等、社債等】2022年3月末までの間、合計で約20兆円の残高を上限に買入れ。
※追記 2022年4月以降は、感染症拡大前のペースで買入れを行い、残高を感染症拡大前の水準へと徐々に戻していく。

3.景気の現状

  • 輸出や鉱工業生産は、基調としては増加を続けている
  • 企業収益や業況感は、全体として改善を続けている
  • 設備投資は、持ち直している
  • 雇用・所得環境は、全体としてはなお弱めとなっている
  • 個人消費は、持ち直しが一服している
  • 住宅投資は、横ばい圏内の動きとなっている
  • 公共投資は、高水準ながら弱めの動きとなっている
  • 金融環境は、全体として緩和した状態にある
  • 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台半ばとなっている
  • 予想物価上昇率は、緩やかに上昇している

4.景気の先行き

  • 回復していくとみられる
  • 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラス幅をはっきりと拡大すると予想される
  • 基調的な物価上昇圧力は、高まっていくと考えられる

5.リスク要因

  • 引き続き変異株を含む感染症の動向と、それが内外経済に与える影響
  • ウクライナ情勢が経済・物価に及ぼす影響についてはきわめて不確実性が高い

6.その他

  • 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続
  • マネタリーベースは、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続
  • 新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムを継続
  • 国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給を継続
  • それぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJ-REITの買入れを継続
  • 新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる
  • 政策金利は、現在の長短金利の水準かそれを下回る水準での推移を想定


■当面の金融政策運営について(2022年3月18日)

1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。

(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注1)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。

(2)資産買入れ方針(全員一致)

長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

①ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。

②CP等、社債等については、2022 年3月末までの間、合計で約20兆円の残高を上限に、買入れを行う。同年4月以降は、感染症拡大前と同程度のペースで買入れを行い、買入れ残高を感染症拡大前の水準(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へと徐々に戻していく。

2.わが国の景気は、新型コロナウイルス感染症の影響などから一部に弱めの動きもみられるが、基調としては持ち直している。海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復している。ただし、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、国際金融資本市場では不安定な動きがみられるほか、原油などの資源価格も大幅に上昇しており、今後の動向には注意が必要である。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響を残しつつも、基調としては増加を続けている。また、企業収益や業況感は全体として改善を続けている。設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。雇用・所得環境をみると、一部で改善の動きもみられるが、全体としてはなお弱めとなっている。個人消費は、感染症の再拡大によるサービス消費を中心とした下押し圧力の強まりから、持ち直しが一服している。住宅投資は横ばい圏内の動きとなっている。公共投資は高水準ながら弱めの動きとなっている。わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、携帯電話通信料の引き下げの影響がみられるものの、エネルギー価格などの上昇を反映して、0%台半ばとなっている。また、予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。

3.先行きのわが国経済を展望すると、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、資源価格上昇の影響を受けつつも回復していくとみられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギー価格が大幅に上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、プラス幅をはっきりと拡大すると予想される。この間、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調的な物価上昇圧力は高まっていくと考えられる。

4.リスク要因としては、引き続き変異株を含む感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要である。また、ウクライナ情勢が、国際金融資本市場や資源価格、海外経済の動向等を通じて、わが国の経済・物価に及ぼす影響についてもきわめて不確実性が高い。

5.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。
 引き続き、①新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、②国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、③それぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJ-REITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。
 当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)。

(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、安達委員、中村委員、野口委員、中川委員。反対:片岡委員。片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。

(注2)片岡委員は、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。

[ゴールデン・チャート社]


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■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合の結果「当面の金融政策運営について」(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)