【2021年12月16日~17日】金融政策決定会合の結果(要約) 2021年12月17日 18時01分

前回(2021年10月28日公表)との比較まとめ

1.新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムについて

 一部について、以下のとおり、期限を2022年9月末まで半年間延長することを決定。

(1)新型コロナ対応金融支援特別オペ

  • 感染症対応にかかる中小企業等向けのプロパー融資分は、期限を半年間延長。
  • 感染症対応にかかる中小企業等向けの制度融資分は、2022年4月以降、貸出促進付利制度上の付利金利を0%(カテゴリーⅢ)、マクロ加算残高への算入は利用残高相当額としたうえで、バックファイナンス措置として期限を半年間延長。
  • 大企業向けや住宅ローンを中心とする民間債務担保分は、期限どおり、2022年3月末をもって終了。

(2)CP・社債等の買入れ

  • CP・社債等の買入れ増額措置は、期限どおり、2022年3月末をもって終了
  • 2022年4月以降は、感染症拡大前と同程度の買入れペースに戻し、CP・社債等の買入れ残高を、感染症拡大前の水準(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へと徐々に引き下げていく。

2.政策金利目標

 前回会合から据え置きを決定。

【短期金利】日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用。

【長期金利】10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債を買入れ。

3.資産買入れ規模

 前回会合から据え置きを決定。

【ETF】年間約12兆円の残高増加ペースを上限に必要に応じて買入れ。

【J-REIT】年間約1,800億円の残高増加ペースを上限に必要に応じて買入れ。

【CP等、社債等】2022年3月末までの間、合計で約20兆円の残高を上限に買入れ。

4.その他

  • 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続
  • マネタリーベースは、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続
  • 新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムを継続
  • 国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給を継続
  • それぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJ-REITの買入れを継続
  • 新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる
  • 政策金利は、現在の長短金利の水準かそれを下回る水準での推移を想定



■当面の金融政策運営について(2021年12月17日)

1.新型コロナウイルス感染症は、引き続き内外経済に大きな影響を及ぼしているが、わが国の金融環境は、全体として改善している。大企業についてみると、CP・社債市場は良好な発行環境となっているほか、貸出市場でも予備的な流動性需要に落ち着きがみられる。中小企業の資金繰りについては、総じてみれば改善傾向にあるが、対面型サービス業など一部には、なお厳しさが残っている。こうした情勢を踏まえ、日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、中小企業等の資金繰りを引き続き支援していく観点から、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの一部について、以下のとおり、期限を 2022年9月末まで半年間延長することを決定した。

(1)新型コロナ対応金融支援特別オペ(全員一致)

①感染症対応にかかる中小企業等向けのプロパー融資分は、現行の取扱いのまま、期限を半年間延長する。

②感染症対応にかかる中小企業等向けの制度融資分は、2022年4月以降、貸出促進付利制度上の付利金利を0%(カテゴリーⅢ)、マクロ加算残高への算入は利用残高相当額としたうえで、バックファイナンス措置として期限を半年間延長する。

③大企業向けや住宅ローンを中心とする民間債務担保分は、期限どおり、2022年3月末をもって終了する。

(2)CP・社債等の買入れ

 CP・社債等の買入れ増額措置は、期限どおり、2022年3月末をもって終了する。2022年4月以降は、感染症拡大前と同程度の買入れペースに戻し、CP・社債等の買入れ残高を、感染症拡大前の水準(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へと徐々に引き下げていく。

2.金融市場調節方針、長期国債以外の資産の買入れ方針については以下のとおりとする。

(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。

(2)資産買入れ方針(全員一致)

①ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。

②CP等、社債等については、2022年3月末までの間、合計で約20兆円の残高を上限に、買入れを行う。

3.わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復している。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響による弱い動きが残っているものの、基調としては増加を続けている。また、企業収益や業況感は全体として改善を続けている。設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。雇用・所得環境をみると、感染症の影響から、弱い動きが続いている。個人消費は、感染症によるサービス消費を中心とした下押し圧力が幾分和らぐもとで、徐々に持ち直している。住宅投資は持ち直している。公共投資は高水準ながら弱めの動きとなっている。わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、携帯電話通信料の引き下げの影響がみられる一方、エネルギー価格などは上昇しており、0%程度となっている。また、予想物価上昇率は、持ち直している。

4.先行きのわが国経済を展望すると、感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが家計部門を含め経済全体で強まるなかで、わが国経済は、ペースを鈍化させつつも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、目先、エネルギー価格の上昇を反映してプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。その後は、一時的な要因による振れを伴いつつも、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調としては徐々に上昇率を高めていくと考えられる。

5.リスク要因としては、引き続き感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要である。とくに、感染抑制と経済活動の両立が円滑に進むかどうか不確実性が高いほか、一部でみられる供給制約の影響が拡大・長期化するリスクにも留意が必要である。

6.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。
 引き続き、①新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、②国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、③それぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJ-REITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。
 当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。

[ゴールデン・チャート社]

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■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合の結果「当面の金融政策運営について」(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)