自民、「虎の子」ポスト放出=難路の国会運営へ 2024年11月08日
特別国会の召集が11日に迫る中、衆院選で大幅に議席を増やした野党に押し切られ、自民党は17ある衆院常任委員長ポストの約半数を譲ることになった。予算案の審議を差配する予算委員長も含まれる。自民が「虎の子」のポストを手放したことで野党はひとまず矛を収めたが、石破政権は少数与党の現実をかみしめる格好となった。
「選挙結果を真摯(しんし)に受け止めたい。国会のスムーズな運営のため受け入れた」。自民の坂本哲志国対委員長は7日、立憲民主党の笠浩史国対委員長と会談後、八つの常任委員長ポストを野党に割り当てる理由をこう説明。「足の引っ張り合いではなく、法案や予算の成立を心掛けることは合意した」と付け加えた。
衆院選後に召集される特別国会は、議事を首相指名選挙などにとどめ、短期間で閉幕するケースが多い。今回、衆院で多数派となった立民など野党側は、石破茂首相がほごにした予算委員会審議などを要求。衆院選前は野党に二つだけだった常任委員長ポストの割り当てを「最低8」(立民国対筋)とするよう求めた。特に予算委員長と本会議の議事を仕切る議院運営委員長を重視する考えを伝えていた。
委員長は選挙でも決められるが、与野党の話し合いで調整するのが通例。当初、難色を示していた自民も、立民の青柳陽一郎国対副委員長から委員長ポストも「全部選挙で決める段階に来ている」と迫られると方針を転換。6日夕から与野党協議が続き、自民の森山裕幹事長から助言を求められた同党ベテランは「議長と議運委員長だけは確保すべきだ」とアドバイスした。
議事進行など委員長の権限は大きい。特に立民が委員長ポストを獲得した予算委員会は、政府予算案を含む国政全般を審議する与野党攻防の主戦場で、注目度も高い。「裏金議員の招致を予算委でやればいい」。野党議員は早速こうささやく。自民幹部も「リスクしかない。どこまで妥協すればいいのか」と政権運営の今後に強い懸念を示す。
一方、政府関係者は「国民生活に直結する予算審議で野党もむちゃはできない。そんなことをしたら野党にもマイナスだ」と指摘。予算委員長ポストを握らせることで立民も一定の責任を共有するとの見立てだ。
立民は予算委員長に国会運営の経験が豊富な安住淳前国対委員長を起用する方向。「われわれも問われる場面が増える」。立民ベテランは表情を引き締めた。