セメント各社、国内で苦戦=需要低迷、海外に活路 2024年06月12日
セメントメーカーが国内事業で苦戦を続けている。燃料に使う石炭の価格高騰に加え、人手不足による建設工事の遅れで需要が低迷しているためだ。各社は値上げに乗り出す一方、堅調な海外市場に目を向け、活路を見いだそうとしている。
セメントは、砕いた石灰石などを高温で焼いて粉状にした建設資材。水や砂利などを混ぜると生コンクリートになる。
セメント協会によると、2023年度の国内需要は前年度比7.3%減の3457万トンと5年連続で減少。バブル経済末期で、公共工事も多かったピーク時の1990年度(8628万トン)と比べ、半分にも満たない水準に沈んでいる。
国内では最近、半導体関連などの工場建設が活発で、都市部では大規模な再開発も目立つ。だが、同協会の諸橋央典会長(住友大阪セメント社長)は「人手不足による工事の長期化など厳しい状況が続いている」と指摘。作業員が足りず工期を延ばしたり、計画を先送りしたりする動きが相次ぎ、セメントの販売減に歯止めがかからない。
各社の国内の収益は振るわない。最大手の太平洋セメントは24年3月期、国内事業で2年続けて営業損失を計上。25年4月出荷分から2年半ぶりに値上げに踏み切ることを決めた。
一方、伸びているのが海外だ。太平洋はセメント事業の海外売上比率が5割を超え、最近は製造過程で二酸化炭素排出量が少ない製品が売れ筋。「アジアでは良い値段で買ってくれる」(田浦良文社長)という。輸出をさらに拡大し、26年度には事業の売上高を現状比2割増やす計画だ。
2位のUBE三菱セメントは人口増が続く米国の南カリフォルニアを中心に事業を展開。30年に海外での営業利益を現状の8割増の3億5000万ドル(約550億円)に高める。住友大阪もオーストラリアで事業拡大を見据えるなど、海外開拓を狙う各社の模索が続いている。