選手支えるAI技術=相手分析や競技力向上に―スポーツとAI(中) 2024年05月31日
今や情報技術(IT)は競技力の向上に欠かせないものと言える。卓球日本代表は2017年に人工知能(AI)を本格的に導入した。日本IBM社の協力で、映像から相手選手のプレーや得点の場面を自動で抽出。毎週のように世界各地で大会が行われる中、分析作業が効率化された。
分析班によるサービス時やレシーブ時の得点率などのデータが選手やコーチに提供され、海外選手の攻略に役立てられる。パリ五輪中も担当者が現地の映像分析室でサポートする予定。今後は打球のコースや回転量の解析に期待し、日本協会の山田耕司氏は「強化に貢献できるし、数値が分かれば見る人の楽しみも増す」と言う。
トランポリン競技でもAIが利用される。ソフトウエア開発などを手がけるインテックは、演技を解析し、跳躍の高さや関節の角度を数値化するシステムを開発。昨年末から日本代表が合宿などを行う東京・国立スポーツ科学センターに導入され、練習をサポートしている。
◇データも活用
データ分析の分野も、進化している。全日本柔道連盟は海外大会で映像を撮影し、科学研究部のアナリストが解析するシステムを構築。のべ約5万試合、5000人ほどの選手データを蓄積する。
選手に相手の映像を見せることもあり、各階級のコーチには海外選手の癖や時間帯による戦い方の変化、担当する日本人選手の弱点などを分析したものを共有する。柔道の専門家たちの視点が入った情報は他国にない強みだ。現場を統括する山本幸紀氏は「これを聞いておいたからよかった、という声が100のうち一つでもあればいい」と話す。
バレーボール男子五輪日本代表の石川祐希(ペルージャ)は、日本の専属トレーナーらとコンディションを共有するITツールを使う。提供元のユーフォリア社によると、体温や疲労度などが「見える化」され、日々の練習に生かされるという。「常に状態を把握してもらえて、パフォーマンスの発揮に専念できる」と石川。科学を有効に利用し、武器とする時代だ。