老朽インフラ、連携して管理=民間委託や広域化の動き―人手不足で模索・各自治体 2024年01月03日

 道路橋梁(きょうりょう)やトンネル、上下水道など、高度経済成長期以降全国で整備されたインフラの老朽化が進んでいる。ただ、管轄する市町村の多くは人手不足が深刻。将来的に維持管理が追い付かなくなる恐れもある。こうした中、自治体の間では複数部署がまとまって補修を民間委託したり、自治体の枠を超えて広域管理したりする動きが出ており、国も支援に乗り出した。
 ◇職員の負担軽減
 新潟県三条市は2017年度から、市が管理する道路や公園、水路の巡回や補修をまとめて民間事業者に委託する取り組みを始めた。「道路に穴が開いている」といった市民からの苦情や要望は市役所を経由せず、受託した事業者が直接受け付け補修に当たる。
 市役所職員の減少に加え、市内の建設事業者も担い手不足に悩まされている同市。担当者は「かつては各部署の業務を個別に受発注していたので、お互いじり貧だった」と強調する。多分野のインフラをまとめて民間委託することにより「職員の負担も減ったし、事業者もまとまった仕事量を確保できるようになった」とメリットを語る。
 いわゆる「平成の大合併」が進まなかった奈良県は、県内市町村の半数以上で技術系職員数が5人以下にとどまる。人材不足を補うため、県は10年度から、市町村の要望に応じて道路橋梁の補修工事や点検を代行する取り組みを始めた。人的・財政的に厳しい市町村を県が支援する行政手法「奈良モデル」の一環だ。
 例えば、県は複数の市町村からまとめて工事を受託。個別に発注する場合に比べ費用を削減できるほか、市町村から県に派遣された職員の育成も行う。取り組みが定着した結果、県内の市町村が管理する橋梁の修繕着手率は、全国平均を上回っているという。
 ◇モデル事業で普及後押し
 国土交通省によると、全国の市区町村の約25%は技術系職員が一人もおらず、インフラ管理の担い手不足は深刻だ。同省は、集約再編を含めて将来も地域に必要な機能を維持するため、23年度から部署や市町村の枠を超えた管理運営を推進するモデル事業に乗り出した。
 23年12月には11地域を選定。今後、計画や体制づくりを支援し、ノウハウを全国に普及させるため、自治体向け手引も作成する予定だ。
 モデル地域の一つ、兵庫県養父市では、周辺4市町と連携し、一定の技術力が必要な橋梁工事を地域で一体的に発注する構想を描く。市担当者は「どういうメリットがあるのか住民に実感してもらい、将来的には上下水道分野にも連携を広げたい」と話している。 

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