英スタートアップ、市場拡大=政府支援強化、「第2のシリコンバレーに」 2024年01月02日

 【ロンドン時事】英国のスタートアップ(新興企業)市場が拡大している。民間調査によると、2023年にスタートアップに投じられた資金は184億ドル(約2兆6000億円)相当と見込まれ、市場規模としては米中に次ぐ世界3位。欧州連合(EU)からの離脱やコロナ禍で低迷が続く経済の立て直しに向け、さらなる資金と人材を海外から呼び込み、「英国を第2のシリコンバレーにする」(ハント財務相)と意気込んでいる。
 英政府によると、企業価値が10億ドル以上の未上場のスタートアップ「ユニコーン」は23年6月末時点で151社あり、このうち130社超が過去10年で誕生した。22年に投資ファンドから提供された資金は、10年前の9倍以上となる310億ドル超と、フランスとドイツの合計額を上回った。特にフィンテックやライフサイエンス、人工知能(AI)といった分野が盛んだ。
 英政府は21年に発表したイノベーション(技術革新)戦略で、経済の低成長が続く要因として、技術革新の速度鈍化を挙げた。英国の官民による研究開発費が国内総生産(GDP)に占める割合は、17年まで経済協力開発機構(OECD)加盟国全体の水準を下回っていた。
 このため、税制優遇により研究開発や設備投資を促したり、新たな移民受け入れ制度の導入で高度外国人材の確保を容易にしたりした。AI人材の育成などに2年間で5億ポンド(約900億円)を投じるほか、設備投資資金の全額を経費計上できる措置を恒久化する計画を23年11月、英議会に提示した。
 AIを用いた技術革新競争が加速する中、英政府は特にAIやライフサイエンス分野で資金や人材の呼び込みを強化したい考え。技術革新で世界をリードするとともに、気候変動などの課題解決に英国発の技術を活用することで、国際社会への貢献も図る。 

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