「軟着陸」が焦点に=インフレ率、目標近づく―24年の米経済 2023年12月31日

 【ワシントン、ニューヨーク時事】2024年の米国経済は、成長維持と物価安定の回復が両立する「ソフトランディング(軟着陸)」の実現ができるかが焦点になる。連邦準備制度理事会(FRB)の大幅な利上げにもかかわらず、景気と雇用は堅調さを保ち、インフレ率はFRBが目標とする2%に近づいた。ただ、中東情勢の緊迫化で供給網が混乱し、インフレが再燃するリスクもあり、先行きの不確実性は高い。
 「失業が大きく増えることなく、インフレが鈍化している。非常に良いニュースだ」。パウエルFRB議長は23年12月の金融政策会合後の記者会見で、軟着陸への手応えをにじませた。
 直近11月の指標で、失業率は3.7%と歴史的な低水準にとどまる。予想を上回る底堅い景気を強い雇用情勢が支える。一方、個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比2.6%上昇と、2年9カ月ぶりの低い伸び。コロナ禍で物価高を招いた供給不足は改善に向かっている。
 こうした経済動向を踏まえ、三井住友銀行の西岡純子チーフエコノミストは「24、25年の米実質GDP(国内総生産)伸び率は2年連続で2%を下回るが、景気は軟着陸する」と見込む。
 インフレ鈍化を受け、FRBが24年春にも利下げに転じるとの観測が株価を押し上げ、ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は23年12月に史上最高値を7回も更新。市場関係者は「企業業績悪化の予兆がなければ、株価の高止まりは当面続く」(日系証券)と予測する。
 一方、インフレ率が順調に下がり続けるかは予断を許さない。家賃を含むサービス価格の上昇は、勢いを幾分失ったとはいえ、なお高水準だ。地政学的な問題が物流や供給に影響し、インフレを再燃させるリスクも読み切れない。
 中東の紅海周辺では親イラン武装組織フーシ派の商船攻撃が相次ぐ。また、主にハイテク分野を巡る米中対立が、重要物資の供給を阻害し、世界経済の「分断」を深刻化させかねない。米大統領選を11月に控え、西岡氏はバイデン政権が「(対中)圧力を強める可能性がある」と予想する。 

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