緩やかな円高・ドル安=日米金融政策に転機―24年の為替展望 2023年12月29日

 2024年の外国為替市場では「緩やかな円高・ドル安」が進むとの予想が多い。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げから利下げに転じる一方、日銀がマイナス金利政策の解除に踏み切るとの予測が背景にある。市場関係者の多くは、円相場が1ドル=150円を下回った「超円安」の修正が進み、これまで拡大方向だった日米金利差の縮小を意識した円高・ドル安が130円台まで進む場面があると想定。ただ、円高が一方的に進むとの見方は少ない。
 23年は、FRBのインフレ退治に向けた急速な利上げを受けて米長期金利が上昇。日米金利差の拡大を意識した円売り・ドル買いが進み、円相場は11月中旬に一時151円90銭台まで下落した。年末にかけては、米利下げ期待と日銀によるマイナス金利政策の解除観測が台頭したため、140円台前半に上昇した。
 市場関係者8人に24年の円相場の展望を聞いたところ、日米金融政策の転換を背景に6人が130円台まで円高が進むと予測。120円台への上昇予想もあった。
 米利下げの開始は早くて3月、日銀のマイナス金利解除は24年春闘での賃上げ動向を確認した後の4月との予想が多かった。いずれの時期もずれる可能性があるものの、「日米金利差が縮小するにつれて円高が進む」(ソニーフィナンシャルグループの尾河真樹氏)との見方が多い。
 ただ、米インフレの再燃などで米金利が再び高止まりする場合、「150円台まで円安が進む可能性がある」(あおぞら銀行の諸我晃氏)との見方もくすぶる。日銀がマイナス金利を解除しても、その後の利上げが続かないと市場が読めば、「円高は一時的で、再び円安になる」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏)との指摘もある。日本の貿易収支の赤字が円高の進行に歯止めをかけるとの見方もあった。
 波乱要因となりそうなのは来年11月の米大統領選の行方。「米国で保護主義的な姿勢が強まれば、年後半は円が売られドルが買われやすい」(ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融氏)という。ウクライナや中東情勢の悪化、中国の景気減速などで円相場が振れるリスクもある。 

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