内需主導にリスク=賃上げ前提、消費回復息切れも―政府経済見通し 2023年12月21日

 政府は21日に閣議了解した経済見通しで、2024年度の実質GDP(国内総生産)成長率を1.3%と試算した。11月に決定した総合経済対策の効果などで、個人消費や企業の設備投資が順調に伸び、所得増が物価高を上回る中での内需主導の成長を見込む。だが、賃上げの実現が前提となるほか、消費回復の息切れなどのリスクがある。
 内需の柱である個人消費について政府は前年度比1.2%増と予測。内閣府は同日、24年度は所得増加率が3.8%で物価上昇率の2.5%を上回るとの試算も示した。
 ただ3.8%のうち2.5ポイントは賃上げによるものだが、30年ぶりの高い水準となった23年春闘に続き、24年春闘でも同程度の賃上げが不可欠。残りの1.3ポイントは定額減税による一時的なものなので、貯蓄に回り消費増にはつながらない可能性が専門家から指摘されている。
 これまでの消費回復は、コロナ禍で行動が制限されてきたことの反動である「リベンジ需要」に支えられた部分も大きかった。しかし、リベンジ需要は一服しつつある中、新たな消費のけん引役は見当たらない。
 もう一方の内需の柱である設備投資については、企業の経常利益が過去最高水準で推移していることなどを背景に、政府は前年度比3.3%増を見込む。だが、人件費や建設コストの上昇に加え、人手不足が響いてくるため、企業の旺盛な投資意欲が持続するかどうかは不透明だ。
 また、長引く金融引き締めによる欧米経済の減速や、不動産市況の低迷による中国経済の停滞が、輸出企業の足を引っ張る恐れがある。
 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「政府の見通しは、経済対策の効果を高めに見積もった甘い試算となっている」と指摘している。 

特集、解説記事