損保カルテルで立ち入り検査=大手4社に課徴金命令視野―都向け契約など範囲拡大・公取委 2023年12月19日

 損害保険大手4社が企業向け「共同保険」などの入札で事前に価格調整するカルテルを行っていたとされる問題で、公正取引委員会は19日、独禁法違反(不当な取引制限)容疑で、各社本社など22カ所を立ち入り検査した。関係者への取材で分かった。
 大手4社は、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。ほか代理店2社も検査した。公取委はこれまで大手4社に任意での資料提出などを求めてきたが、法的権限を行使して実態解明を進める必要があると判断したもようだ。
 関係者によると、公取委は行政処分としての排除措置命令や課徴金納付命令も視野に入れる。今回、都やコスモ石油、エネルギー・金属鉱物資源機構、東京電力グループと中部電力が出資する発電会社「JERA」(いずれも東京都)、シャープ(堺市)、京成電鉄(千葉県)の計6団体との契約を調査対象に追加した。東急グループと仙台国際空港(宮城県)向けの共同保険について既に調べを進めていたが、範囲を拡大した。
 6団体との契約で損保各社による事前調整が始まったのは遅くとも2013~20年以降とみられ、年間保険料契約額は5億~80億円規模に上るという。このうち都が行った公用車の自動車保険入札では、損保側の課長級社員が関与した疑いも浮上。公取委は組織的な違反行為がなかったかも調べるとみられる。
 共同保険は損保各社が保険金支払いのリスクを分担するために契約。大手4社による寡占状態で、競争原理が働きにくかった可能性もある。
 昨年12月、企業からの指摘で価格調整疑惑が発覚。4社の調査で、計100社超との取引で不適切な行為が判明した。金融庁は近く4社に業務改善命令を出す見込み。
 取材に対し、東京海上日動は「深くおわびする。関係当局の調査に誠実に協力する」と回答。損保ジャパンと三井住友海上、あいおいニッセイ同和の3社も「調査に協力する」などとコメントした。 

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公正取引委員会=東京都千代田区
公正取引委員会=東京都千代田区

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