防衛増税、開始時期で迷走=明示見送り、財源不透明に―税制改正 2023年12月14日

 自民・公明両党は2024年度税制改正大綱で、防衛費増額の財源に充てる増税の開始時期を明示しなかった。政治資金パーティー収入の裏金化疑惑で国民の政治不信が高まる中、負担増を求める決定は難しいと判断した。増税は26年以降にずれ込む公算が大きいが、財源確保の不確実性は高まっている。
 政府は昨年、23年度から5年間で総額43兆円まで防衛費を増やす方針を決めた。法人・所得・たばこ各税の増税で1兆円強を賄い、23年度税制改正大綱に「27年度に向けて複数年かけて段階的に実施する」と明記。ただ、増税時期は示さず、岸田文雄首相も「24年以降の適切な時期」と述べるにとどめた。
 政府・与党は年内に増税時期を決める予定だったが、内閣支持率の低下を背景に議論は迷走した。首相は10月に24年度の増税見送りを表明。自民党の宮沢洋一税制調査会長は「25年」と「26年」の2案で仕切り直したが、定額減税との整合性が取れず、延期論が急速に広がった。
 24年度大綱では、財源の一部とするたばこ税について、加熱式たばこの税率を引き上げて紙巻きと同水準の負担とする方向性を新たに示した。引き上げ手法を先に固めて、将来の増税に備える思惑も見え隠れする。
 増税が先送りされても、「規模ありき」で決定された防衛費の増額分を別の財源からかき集めることになり、財政が一段と悪化する懸念もある。鈴木俊一財務相は「増税開始時期が遅れるのであれば、さらに精査して財源を見つけ出す努力をしなければならない」と強調。外国為替資金特別会計の剰余金などに余地は残るが、防衛費に回せば国民の暮らしに直結した政策に充てる分が減り、借金である国債の発行が膨らみかねない。 

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自衛隊観閲式で岸田文雄首相の訓示を聞く自衛隊員=2021年11月27日、陸上自衛隊朝霞駐屯地
自衛隊観閲式で岸田文雄首相の訓示を聞く自衛隊員=2021年11月27日、陸上自衛隊朝霞駐屯地

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