記事使用料、引き上げに慎重=大手IT、報道機関に説明強化―ニュースポータルサイト 2023年11月11日

 ニュースポータルサイトを運営する大手IT企業が報道機関に支払う記事使用料について、公正取引委員会が9月に「十分な協議」を促す報告書を公表したことを受け、インターネット上のニュース配信事業への影響が注目されている。IT企業側は、契約内容などに関する報道機関への説明を強化する方針。しかし、使用料の引き上げは収益悪化に直結するだけに、慎重な姿勢が目立つ。
 ニュースポータルを利用する読者の割合は年々増加。IT企業はニュースポータルへの記事表示で広告収入を得て、報道機関に記事使用料を支払っている。公取委の報告書によると、ポータル6社の2021年度の使用料は、1000ページビュー(閲覧回数)当たり平均124円。最も高い事業者は251円、最低は49円と5倍の開きがあった。
 報告書は、最大手のヤフー(現LINEヤフー)が独占禁止法上の「優越的地位」にある可能性も指摘。その上で、使用料に関して交渉を求められた場合は、「水準決定根拠の開示を含め、十分な協議が行われることが望ましい」と明記した。
 LINEヤフーは取材に対し、契約について「これまで以上に丁寧に説明するなど透明性を高め、対話を増やしていくことが大切だ」と回答。出沢剛社長は契約見直しに関し、「今まさに(報道機関と)コミュニケーションを開始したところで、時期や内容はこれから議論を重ねていく」と説明した。
 スマートニュースは広告収益の2割を管理費用として差し引き、残りを報道機関と折半しており、使用料は「一定の適正さを有する」と訴える。今後も、「還元の在り方をさまざまな観点や方法で検討していく」との姿勢だ。グノシーは「(他社の使用料と)比較しても特に大きく逸脱していない」、米マイクロソフトの日本法人は「われわれのモデルは適正だ」と主張している。
 日本新聞協会は記事が表示されたページの広告収入だけでなく、サイトへの集客効果などの価値にも配慮して対価を決めるよう求めている。公取委も広告収入以外に生じる「収益への貢献」を使用料に反映させることが望ましいと指摘しており、今後はIT企業と報道機関の交渉が活発化しそうだ。 

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