キオクシア、戦略練り直し急務=上場・再編、相次ぎ頓挫 2023年10月30日

 半導体大手キオクシアホールディングスと米ウエスタンデジタル(WD)の統合交渉が不調に終わった。キオクシアは2018年に東芝から切り売りされた後、計画した上場も実現できていない。半導体不況で業績は低迷しており、生き残りに向けた戦略を早急に練り直す必要がありそうだ。
 キオクシアの源流は、東芝の主力事業だったNAND型フラッシュメモリー部門だ。東芝は米原発子会社の破綻などで経営危機に陥り、債務超過から脱するため売却を決断。分社化した上で米投資ファンドのベインキャピタルなどの連合に2兆円で譲渡し、4割を再出資する形で切り離した。
 キオクシアは当初3年以内の株式上場を目指したが、19年に市況の悪化でいったん先送りした。20年には東証の承認を得て上場予定日も決まっていたものの、米中対立のあおりで収益見通しが不透明になり、直前に延期を決めた。
 次に模索したのが提携先のWDとの統合だ。半導体産業は需要の波が大きい上、巨額の設備投資が必要となる。規模拡大で事業基盤や資金調達力を強化する狙いだった。しかし、21年ごろ始まった統合交渉は難航し、一時は物別れに終わった。統合構想はその後、再び動きだし、今月内の基本合意を目指していたが、ベインを通じ間接出資する韓国SKハイニックスが「同意していない」と強硬に反発。基本合意間際になってWDがさじを投げた。
 キオクシアの業績は振るわない。22年10~12月期以降は3四半期連続で純損失を計上。早期退職者の募集も計画する。
 同社の不振は東芝にも頭痛の種だ。23年4~6月期連結決算は、キオクシアに対する持ち分法投資損失が響き、純損益が赤字に転落。東芝はキオクシアを「東芝全体の価値の中で重要なピース」(渡辺章博取締役会議長)と説明するが、業績低迷が続けば東芝が非上場化で目指す再建の足を引っ張る可能性もある。 

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