日銀、緩和「正常化」見通せず=次期総裁選び本格化―今年の金融政策 2022年01月03日

 今年の日銀の金融政策は、現在の大規模緩和策を維持する公算が大きい。欧米の中央銀行はインフレ圧力の高まりから金融緩和の正常化を進めているが、日本では日銀が掲げる2%の物価目標の実現がなお遠い。10年目に突入する異例の金融緩和の正常化が見通せないまま、2023年4月に任期満了を迎える黒田東彦総裁の後任人事も本格化する。
 「欧米のように金融政策の正常化に向けて動きだすことにはならない」。黒田総裁は昨年末の記者会見で、マイナス金利政策など大規模緩和を粘り強く続ける考えを強調した。
 資源価格の高騰を背景とする物価上昇の波は、日本にも及んでいる。企業間取引の価格を示す物価指数は約35年ぶりの高水準。しかし、最終製品への転嫁の動きは鈍く、消費者物価指数は0%台半ばにとどまる。
 同指数は現在、携帯電話料金の引き下げで1.5ポイント程度押し下げられており、この影響は今春に解消する。このため、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「4月には1%台の伸びとなる可能性が高い」と分析するが、2%目標の実現は見込めないとして「日銀が金融緩和を転換するのは極めて困難だ」と指摘する。
 一方、海外ではイングランド銀行(英中央銀行)が昨年末に利上げに踏み切った。米連邦準備制度理事会(FRB)は年内に3回程度利上げするシナリオを描く。
 日銀が正常化に動けず、内外の金利差拡大から円安が進めば、原油や原材料など輸入品が一段と値上がりしかねない。賃上げが進まなければ、家計の負担が増し景気を冷やす「悪い物価上昇」となる恐れがある。また、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の影響も不透明。日銀は難しい政策判断を求められる。
 こうした中、黒田総裁の後任選びが行われる。今夏の参院選後に政府が人選を進める見通しだが、財務省出身の黒田氏が2期10年務めることから次期総裁は日銀出身者から選ばれるとの見方も浮上。雨宮正佳副総裁や前副総裁の中曽宏大和総研理事長が有力視されている。 

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