先端技術活用が「レガシー」=五輪警備、顔認証など―専門家、官民連携も評価 2021年12月26日

 今夏の東京五輪・パラリンピックで、大会組織委員会と警察などは過去最大規模の警備態勢で臨み、テロや大きな事件事故は起きなかった。専門家は、顔認証などの先端技術の活用や官民連携をレガシー(遺産)として評価する。
 五輪では、会場や選手村などの内部や周辺で警備が実施された。組織委の警備は全国の警備会社553社で構成される共同企業体(JV)が担当し、1日最大で約1万4000人の警備員が従事。警察では、警視庁を中心に全国からの応援部隊を含め約5万9900人の警察官が動員された。
 組織委は会場や選手村などに入る選手、スタッフらの本人確認の際、大会史上初めて顔認証システムを導入した。NEC(東京都港区)が開発し、300以上の端末が設置され、入場者の顔を事前に登録した写真を基にチェックした。
 組織委によると、大会に関連して計約400万回の認証が行われたが、一度も不具合は起きなかった。警備責任者は「人の目による確認ではヒューマンエラーが起こり得る。顔認証は安全に大きく貢献した」と語った。
 警察が特に力を入れたのは、危険物も運べるためテロに使われる恐れがあるドローン対策だ。不審な機体を検知する機器や運航不能にするジャミング(電波妨害)装置を配備した。
 ヘリコプターなどの航空機によるテロ対策では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)開発の運航管理システムを活用。許可を得て制限区域を飛行する機体には衛星と通信できる端末を積んでもらい、端末未搭載の不審機を早期に発見できるようにした。
 警察庁幹部は「警察の力だけではテロ対策は十分でなく、官民連携が欠かせない」と強調する。車両突入対策では道路管理者に車止めの設置を求め、レンタカー会社には不審者情報の提供を要請した。
 テロ対策に詳しい公共政策調査会の板橋功・研究センター長は「五輪警備では新しい技術が活用され、官民の情報共有もよくできていた。2025年の大阪・関西万博などにきちんと引き継ぐことが課題だ」と話した。 

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