「成長と分配」へ賃上げ後押し=研究開発支援、経済安保強化―来年度予算案 2021年12月24日

 2022年度予算案では、岸田文雄首相が掲げる「成長と分配の好循環」の実現に向け、看護、介護、保育分野の賃上げなどの施策を盛り込んだ。分配の原資を生み出す成長戦略として、「科学技術立国」「デジタル田園都市国家構想」「経済安全保障」の3分野に重点投資する。
 政府は22年度予算案と21年度補正予算を一体の「16カ月予算」として編成。補正では分配戦略の柱として、来年2月から9月まで介護職員や保育士の収入を月3%程度引き上げるための経費などを2640億円計上した。22年度予算案でも診療報酬改定などで10月以降の処遇改善に対応するため、588億円を確保している。
 22年度予算案では、高い成長が期待されるデジタル分野の人材育成や非正規労働者のキャリアアップなどの支援に労働保険特別会計から1019億円を投じる。
 一方、「科学技術立国」を目指し、科学技術振興費を過去最大の1兆3788億円計上。デジタル化や脱炭素分野のほか、次世代半導体などの研究開発を推進する。「デジタル田園都市国家構想」を推進するため、光ファイバーや高速大容量通信規格「5G」の基地局整備など地方のデジタル基盤整備を加速させる。
 「経済安全保障」では、解読が困難とされる量子暗号通信の研究開発やサイバーセキュリティー対策の強化などに財源を振り向ける。世界的に開発競争が激化しており、官民一体で日本の技術的優位を確保したい考え。
 ただ、岸田政権の成長戦略については「海外主要国に比べて投資額が少なく力不足だ」(第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミスト)との指摘も出ている。 

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