輸出主導で経済大国に=改革進まず米と対立―WTO加盟20年・中国 2021年12月10日

 【北京時事】中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して11日で20年。急増する輸出を足掛かりに高成長を実現し、米国に次ぐ世界2位の経済大国に躍進する大きな転機となった。一方、懸案の国有企業改革は進まず、米国との対立も先鋭化した。課題を抱えたまま膨張を続ける中国は、世界経済を揺さぶる波乱要因にもなりかねない。
 中国は1986年にWTOの前身に当たる「関税貿易一般協定(GATT)」への加盟を申請。78年に始まった改革開放政策を追い風に貿易障壁の撤廃や市場経済の導入などに取り組み、15年をかけてWTO加盟を果たした。
 その成果は著しい。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、加盟時の2001年から20年までにモノの輸出は9.7倍、輸入は8.4倍、貿易額は9.1倍に急拡大。同時期の世界の貿易総額が2.8倍にとどまったのに比べ、中国の伸びは突出する。貿易総額に占める中国の比率も4%から13%に上昇。13年には米国を抜いて世界最大の貿易国となった。
 この間、対外開放による外国企業の積極的な誘致を通じて「世界の工場」の地位を確立した。当初は安い人件費に支えられた単純な組み立てによる加工貿易が中心だったが、外国の技術や資本に支えられて産業構造の高度化を進め、現在はパソコンやスマートフォンなどが輸出の主体だ。今や世界のサプライチェーン(供給網)の重要な担い手だが、「中国依存」の現状は、むしろ何かをきっかけに「ボトルネック」となるリスクを高めている面もある。
 一方、経済成長に伴って国民の所得水準も向上し、19年には1人当たり国内総生産(GDP)が1万ドル(約113万円)を突破。14億人の人口とも相まって「世界の市場」の性格も強める。08年のリーマン・ショック後は米国に代わって世界経済のけん引役となり、世界の経済成長に対する中国の寄与度は約3割を占めるとされる。
 進展する対外開放に対し、改革は停滞気味だ。近年の米中貿易協議でも、国有企業の優遇策や補助金支給による国家主導の産業育成策などがやり玉に挙がった。米国との対立が激しさを増す中、国家安全保障の観点からIT業界を中心に民間企業を締め付ける動きも続いており、改革に逆行しているとの懸念がくすぶっている。 

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