老朽空き家の収用簡略化=知事裁定で期間短縮―所有者不明土地の活用促進・国交省 2021年12月02日

 国土交通省は、国や自治体が所有者不明の土地を公共事業に使うために取得する手続きを簡略化し、老朽化した空き家がある土地については都道府県収用委員会の裁決を不要とする方針を固めた。知事の裁定で収用できるようにし、手続きに必要な期間を大幅に短縮。迅速な土地の取得・活用を進める。来年の通常国会に提出予定の所有者不明土地特別措置法改正案に関連規定を盛り込む。
 現在は物置など小規模な建物がある土地や更地の収用に限り、国や自治体が知事に裁定を申請できる。国交省は、適正に管理される見込みがないと地元自治体が判断した老朽空き家のある土地も知事裁定の対象にする考え。所有者不明土地の取得は、収用委の手続きを踏むと平均で約31カ月かかるが、知事裁定だと約21カ月に短縮される。
 収用に伴う所有者への補償額は、建物の移転費用などを基に収用委が算定している。改正案では、長らく居住者のいない空き家は移転の必要がなく、建物の解体費用だけで済むと見なし、収用委の裁決を不要とする。
 市町村やNPOなどが所有者不明土地を期限付きで公共目的に利用できる地域福利増進事業も、更地などに限り、収用委の裁決を不要としている。国交省は老朽空き家がある土地を事業の対象に加え、防災広場や駐車場などへの活用を進める。
 この他、特措法改正案には、崩れた家屋の破片や不法投棄されたごみの撤去などを市町村が行えるとの規定を盛り込む方針。行政代執行は所有者が分かっていることを前提にしているが、防災などの観点から、適正に管理されていない土地については所有者が不明でも実施できるようにする。
 所有者不明土地は相続登記が行われないなどの理由で発生。公共事業の用地買収などの障害になっているが、少子高齢化で増加が見込まれている。 

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