カナダ通貨6年ぶり高値=油価回復、金融緩和縮小追い風 2021年05月19日

 【ニューヨーク時事】豊富な資源を抱えるカナダの通貨が、対米ドルで6年ぶりの高値に上昇している。「資源国通貨」の代表格とされるカナダ・ドルの上昇は、原油価格の回復が追い風となっているほか、景気の持ち直しを踏まえ先進7カ国(G7)の中で先行して金融緩和の縮小に向かっていることも背景にある。
 カナダ中央銀行は4月下旬、量的緩和の規模縮小を決定。さらに利上げ時期についても、2023年との従来見通しを前倒しして22年後半の可能性を示唆。新型コロナウイルス禍からの立ち直りでG7の中でもいち早く異例の金融緩和から出口に向けて一歩踏み出した。これがカナダ・ドル上昇の弾みとなり、18日には1米ドル=1.2009カナダドルと、15年5月以来の高値を付けた。対円でも1カナダドル=90円台と3年4カ月ぶりの水準に上昇した。
 一方、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は景気に慎重な見方を崩さず、23年末まで事実上のゼロ金利政策を維持する見通し。カナダ中銀との対照的な姿勢が、米ドル売りと、カナダ・ドルの上昇を後押ししている。
 ただ、両国とも金融政策の先行きには不透明感も漂い、カナダ・ドルの上昇が一本調子で続くかは定かでない。米国では、予想を大幅に上回る物価統計が発表され、インフレ懸念が台頭。FRBにも緩和維持路線の修正観測がくすぶり、為替相場の基調が米ドル高方向に転換することもあり得る。
 調査会社オックスフォード・エコノミクスのトニー・スティロ氏は「カナダ中銀のマックレム総裁は通貨の一段高が輸出や設備投資に悪影響を及ぼすのを懸念している」ため、同中銀が利上げを急がない可能性を指摘した。 

特集、解説記事