国とメーカー責任、初の統一判断=建設石綿4訴訟、17日判決―最高裁 2021年05月16日

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けたとして、元労働者と遺族が国と建材メーカーに損害賠償を求めた4件の集団訴訟(横浜、東京、京都、大阪)で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は17日、判決を言い渡す。小法廷は、これまでの決定で国やメーカーの責任を部分的に確定させたが、理由を示しておらず、判決では初の統一判断が示される。
 全国で続く同種訴訟や、一律解決のため原告1人最大1300万円を支払う方向で調整している与党プロジェクトチームの和解案にも影響しそうだ。
 同小法廷は昨年12月の決定で、東京訴訟の大部分の原告について国の賠償責任を確定させた。田村憲久厚生労働相は直後に謝罪し、一律解決に向け、原告らと協議するよう指示した。
 残る3件のうち、京都、大阪訴訟でも大半の原告に対する国の責任が確定したが、横浜訴訟では確定していない。判決では、国の規制権限の在り方や、労働安全衛生法の直接の保護対象ではない個人事業主「一人親方」の救済について判断される見通しだ。
 一方、メーカーの責任については、一部訴訟で計10社への賠償命令が確定した。だが、労働者が現場を渡り歩いて多くの建材を使う上、疾患の潜伏期間が10~50年と長いことから、どのメーカーの建材で具体的な被害を受けたかの立証は難しく、高裁段階では責任を認めない判決もあった。
 原告側は「加害を否定できない場合は連帯して責任を負う」とする民法の共同不法行為という考え方に着目し、各建材の市場シェアの高い企業の責任を問うてきた。判決では、共同不法行為の考え方についても、初めて判断が示される可能性がある。 

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建設アスベスト横浜訴訟の上告審弁論のため最高裁へ向かう原告ら=2020年10月22日、東京都千代田区
建設アスベスト横浜訴訟の上告審弁論のため最高裁へ向かう原告ら=2020年10月22日、東京都千代田区

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