コロナ禍から「平時」へ=収益は回復、電動化など焦点に―トヨタ 2021年05月12日

 トヨタ自動車の2021年3月期連結決算は、同社が新型コロナウイルス禍の苦境から「平時」に戻りつつある姿を示した。22年3月期は売上高と本業のもうけを示す営業利益、純利益が過去最高に迫る見込みで、ほぼコロナ前の状態に復帰する。ただ、今後も順調に収益を伸ばし、市場で勝ち残るには、世界で技術開発競争が加速する電動化、自動化などへの対応が焦点となる。
 「これまでの取り組み、関係者の思いが成果として出た年だった」―。12日のオンライン説明会で、近健太執行役員はコロナ禍の淵から収益を挽回させたこの1年をこう振り返った。
 世界の自動車市場では、コロナが広がった昨年初めごろから新車販売が急減。トヨタも国内外の工場で操業停止や減産を強いられ、同4月には日野自動車、ダイハツ工業を加えたグループ世界販売台数が前年同月比で半分近くに落ち込んだ。
 ただ、その後は中国、米国が先行する形で持ち直し、秋にはプラスへ転換。21年3月期の世界販売台数は前期比5.1%減と当初計画(14.9%減)よりも減少幅を抑えることができた。期初には営業益が8割落ち込むという衝撃的な見通しを示したトヨタだが、販売回復にコスト削減効果も加わり、減益幅は1割弱にとどまった。
 この勢いは22年3月期も続くとみており、世界販売台数は6.4%増の1055万台、売上高は過去最高だった19年3月期(30兆2256億円)に迫る30兆円に膨らむ見通しだ。
 とはいえ当面は、世界的な半導体不足が懸念材料。現時点では在庫を確保しているので大きな影響はないというが、それでも「まだ予断を許さない状況」(近氏)で、情勢次第では生産調整を強いられる恐れもある。
 さらに中長期的には、自動運転や電動化などの次世代自動車技術を指す「CASE(ケース)」にどう対応するかが課題となる。中でも注目されるのは、脱炭素化の流れの中で競争激化が予想される電動化の分野だ。
 トヨタは「(顧客の)選択肢を広げる」(長田准執行役員)狙いから、電気自動車(EV)だけの「一本足打法」ではなく、ハイブリッド車や燃料電池車など全方位で対応する構え。ただ、欧米や中国ではEVへの傾斜が強まっており、方向性を見誤れば世界的な電動化の競争で取り残されるリスクも残る。 

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