「空箱」上場、4月に急減=当局が監視強化―米 2021年05月08日

 【ニューヨーク時事】米国で盛んな、未公開企業買収を目指した特別買収目的会社(SPAC)の上場に、急ブレーキがかかった。米調査会社によると、4月の上場件数は14件にとどまり、前月比で8割超減少した。同国当局が監視強化に乗り出したためとみられる。日本におけるSPAC解禁をめぐる議論にも影響を与えそうだ。
 SPACは、自らは具体的な事業を持たずに上場し、2年以内に有望企業を探し出して買収する。買収された企業が存続会社となる「空箱」のような会社だ。魅力的な企業と合併すれば、株価が上昇し、出資者は利益を得られる。買収される企業には、短期間で上場できるメリットがある。
 米国では、大規模な財政出動や金融緩和を背景に株式相場が回復した昨夏以降、SPACの上場が増えた。米S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスによると、今年に入って勢いが加速し、1~3月の上場件数は月80~100件に上った。既に昨年1年間の実績を上回っており、SPAC400社以上が買収先を探している状況だ。
 一方で米証券取引委員会(SEC)は、過熱するブームに警戒を強めている。4月、SPACが買収時に発表する業績見通しに虚偽や誇大なものがあれば、法的な責任が生じる恐れがあるとの声明を出し、市場をけん制した。
 SECはさらに、SPACが出資者に発行する新株予約権(ワラント)をめぐる会計ルールを変更する方針も提示した。米メディアによると、上場済みのSPACの財務に影響が出る恐れがあるという。当局の動きが上場急減につながったとみられ、「ブームは沈静化に向かっている」(調査会社アナリスト)との見方も浮上している。 

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