独立後の経済、厳しい見方=「やっていける」の声も―英スコットランド 2021年05月07日

 【ロンドン時事】英国からの独立論を争点に6日行われたスコットランド議会選。関心事の一つに、独立した場合の財政や経済運営がある。地元企業に詳しい消息筋は「経済的に十分にやっていける」とみるが、「英国の欧州連合(EU)離脱で生じた2~3倍の影響をスコットランドの産業にもたらす」と厳しい予測もある。
 スコットランドの主要産業には金融ビジネスや製造業、卸・小売業、観光などがある。地域の1人当たり国内総生産(GDP)は3万530ポンド(約462万円、2020年)。英全体の3万1446ポンドを若干下回るが、英中小企業連盟のスコットランド西部担当幹部、久保山尚氏によれば「英国の中では『中の上』に位置する」レベルだ。
 原油価格の低下でスコットランド沖の北海油田の石油・ガスからの収入は減っている。しかし、風力など再生可能エネルギーの開発先進地域であり、必要な電力の97%を既に再生エネルギーで供給。世界有数の再生エネルギー大国となる可能性を秘める。
 このように「それほど悪くない経済」(久保山氏)だが、独立による悪化を懸念する声もある。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の研究チームは2月、英国のEU離脱と独立が長期的に、スコットランドの1人当たりの所得を6.3~8.7%押し下げるとする推定結果をまとめた。
 自治政府与党のスコットランド民族党(SNP)は、独立した場合EUに「再加盟」する方針を表明済み。SNPのスタージョン党首は4日、「EU単一市場は英国の7倍の規模があり、スコットランドに巨大な経済的機会をもたらすだろう」と述べた。
 だが、スコットランドの輸出の61%、輸入の67%は英国内で行われている(17年)。独立によって阻害される国内貿易をEU加盟によって緩和することはほとんどできないと、LSE報告は指摘した。また、シンクタンクのインスティテュート・フォー・ガバメントは3月、EU加盟には「10年近くかかる可能性がある」と予測した。 

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スコットランド民族党(SNP)のスタージョン党首=5日、アバディーン(AFP時事)
スコットランド民族党(SNP)のスタージョン党首=5日、アバディーン(AFP時事)
スコットランド独立後の命綱、北海油田=2019年4月、アバディーン沖70キロの海上(AFP時事)
スコットランド独立後の命綱、北海油田=2019年4月、アバディーン沖70キロの海上(AFP時事)

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