米景気、回復鮮明に=くすぶる過熱リスク 2021年05月01日

 【ワシントン時事】米景気の回復が鮮明になっている。新型コロナウイルス危機を受けた大型経済対策やワクチン普及が個人消費を押し上げ、経済規模は危機前の水準にほぼ戻った。日本を含め世界経済に好影響が波及する一方、景気過熱を招くリスクと隣り合わせだ。
 1~3月期の実質GDP(国内総生産)速報値は年率換算で前期比6.4%増と、3四半期連続のプラス成長。GDPの水準はコロナ危機直前の99%まで回復し、雇用拡大も進む。
 コロナワクチン接種率は人口の4割を超え、経済対策に伴う現金給付が、GDPの7割を占める個人消費を刺激する。レストラン予約サイト「オープンテーブル」によれば、4月に入り全米の着席予約数がコロナ危機前の9割まで回復する日が増えている。
 中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は4月28日の金融政策会合で、景気と雇用が「強さを増した」と指摘。年初に足踏みした持ち直しの動きが加速しているとの認識を示した。
 しかし、景気過熱リスクもちらつく。経済対策は計約6兆ドル(約656兆円)とGDPの3割に迫る。3月のインフレ率は2年7カ月ぶりの水準に急加速し、FRBが目標とする2%超に届いた。市場では資産バブルの前兆と言える「やや泡立った状況」(パウエルFRB議長)も出ている。
 波乱要因になりかねないのが、バイデン政権が実現を目指す、インフラ投資を中心とした4兆ドル規模の成長戦略だ。「戦後最大」(バイデン大統領)の巨額財政支出が景気回復局面で発動されれば、インフレ高進が現実味を帯びる。
 FRBは今後予想されるインフレ率上昇は「一時的」とみて、金融緩和を続ける考え。だがエコノミストのモハメド・エラリアン氏は、インフレが景気回復に伴う需要急増で起きた場合に比べ、サプライチェーン(供給網)の障害などによる供給不足で発生した場合の方が「はるかに対処が難しい」と警告。引き締めが遅れる「政策ミスが起きる可能性が高く、注視が必要だ」と訴える。 

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