情報開示で市場健全化狙う=規制効果は不透明―デジタル広告 2021年04月27日

 デジタル広告規制に関する政府の最終報告がまとまった。多数の仲介事業者が存在するため、取引実態が見えにくくなったり水増し請求のような不正の余地が生まれたりする問題が指摘されており、巨大ITに不正行為への対応や情報開示などを義務付けることで広告市場の健全な発展を促す狙いだ。ただ、企業の技術革新を妨げないことを重視して巨額制裁金など強制力を伴う罰則は設けておらず、どこまで効果が上がるかは不透明だ。
 デジタル広告市場は近年伸び続け、2019年に初めて総額2兆円を突破した。新型コロナウイルス禍で他媒体の広告費が落ち込む中でも伸びており、20年には日本の広告費全体の36.2%を占めるに至った。
 だが、デジタル広告市場にはゆがみも生じている。広告主から掲載先サイトに表示されるまでの間に多数のシステムや仲介業者を経由するため、広告主は出稿先や誰に見られているのかを把握しづらい。このため、広告費を不正に水増し請求するなどの問題がある。また、配信システムで米グーグルが高いシェアを握り、データ囲い込みなど寡占による弊害も指摘されている。
 検索履歴や閲覧履歴を基に表示される「ターゲティング(標的型)広告」への消費者の懸念も根強い。消費者庁の調査では約7割の消費者が不快に感じていた。ある政府関係者は「広告はデジタル市場のさまざまな課題が凝縮された分野だ」と強調する。
 政府の規制案は、2月に施行された「特定デジタルプラットフォームの透明性・公正性向上法」などを活用して巨大ITに不正対応や情報開示を義務付け、政府がそれを監視する内容だ。悪質な事例が発覚すれば経済産業相が公正取引委員会に強制措置を含めた対応を要請するが、基本的には「巨大ITの自主的な改善に期待する」(経産省関係者)仕組みで、広告主や消費者が目に見える形で恩恵を受けられるかは予断を許さない。 

特集、解説記事