休業要請、対象・期間が焦点=感染抑止と経済両にらみ―政府 2021年04月20日

 新型コロナウイルス対策として大阪府が検討する休業要請は、感染抑止効果と経済への影響をにらみつつ、対象とする範囲や期間をめぐり、政府との間でぎりぎりの調整が続いている。感染状況が「第4波」の様相を呈する中、対策強化は喫緊の課題。一方で幅広い業種への休業要請に踏み込めば、経済へのさらなる打撃は避けられない。休業に応じた店舗への支援策も焦点だ。
 大阪府が緊急事態宣言の要請に合わせ、休業を求める方針を打ち出したのは、飲食店への営業時間短縮に絞った従来の対策では、感染力の強い変異ウイルスに対処できないと判断したためだ。
 政府は今年1月から3月にかけ、大阪府を含む関西圏や首都圏を中心に2度目の緊急事態宣言を発令。「第3波」はしのいだかに見えたが、宣言解除で再び感染拡大に転じた。このため4月に入り、大阪府などに初めて「まん延防止等重点措置」を適用。飲食店への時短要請の再徹底を図ったものの、新規感染者数は第3波ピーク時の2倍程度となり、医療提供体制は限界に達しつつある。
 背景には変異ウイルスの影響に加え、まん延防止措置も「人々の行動を変えさせるインパクトに欠けた」(内閣官房幹部)との指摘があり、期待した効果は挙げられなかった。
 大阪府の吉村洋文知事は20日、記者団に「大きな人流を止めるのに効果的な対策を取るべきだ」と表明。飲食店や大規模商業施設、テーマパークへの休業要請を政府と調整中だと説明した。ただ飲食店については、食が生活の根幹に関わるとの観点から、幅広い業種に休業を求めた昨春の緊急事態宣言でも時短要請にとどめた経緯がある。
 一方の政府は、休業要請について「根拠を含め整理する必要がある」(首相周辺)と慎重だ。今後、東京都なども宣言を要請する見通しであることから、経済への影響を極力避けるため、全面休業ではなく「午後5時までの時短」や「酒類の提供停止」とする案も浮上している。期間は大規模な人の移動が見込まれる大型連休を含む2週間程度が検討されているが、吉村知事は2週間では効果が判断できないとの立場だ。
 休業要請に伴う店舗の支援策も課題となる。対象業種を幅広く設定すれば、国や自治体は相応の財源確保を迫られる。政府はこうした事態に備え、2021年度予算で5兆円の予備費を確保しているが、自民党ではさらなる歳出拡大を見込んで、21年度補正予算案の編成が必要になるとの見方も出始めた。
 ◇一斉休校は否定的
 政府は昨年2月、新型コロナ対策として全国の小中学校・高校に一斉休校を要請した。与党内には、対象地域で人の流れを止めるため、休校も選択肢とすべきだとの意見もある。吉村知事はオンライン授業を検討する考えだ。
 ただ、政府は今のところ否定的だ。萩生田光一文部科学相は20日の記者会見で、子どもの心身への影響などを指摘し「慎重に判断すべきだ」と強調。文科省幹部は、十分な感染対策を講じた上で、原則として対面授業とするよう大阪府と調整する考えを示した。 

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